1997 Fiscal Year Annual Research Report
下痢性貝毒原因渦鞭毛藻Dinophysis spp.の色素の由来に関する研究
Project/Area Number |
09760181
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小池 一彦 北里大学, 水産学部, 助手 (30265722)
|
Keywords | Dinophysis fortii / 下痢性貝毒 / フィコビリン / ラン藻 / クリプト藻 / 渦鞭毛藻 / 葉緑体 / 光合成 |
Research Abstract |
光合成性Dinophysis spp.は葉緑体を持つが、その形態、量は著しく変化し、ほとんど葉緑体を持たない細胞も存在する。また、Dinophysis spp.は光合成補助色素としてフィコビリンを持つが、本色素はラン藻やクリプト藻に特異的な色素である。これらのことから、Dinophysis spp.はラン藻、クリプト藻を取り込み、そのフィコビリンを得ていると考えられる。本年度はDinophysis fortiiに関して、本種によるラン藻(Synechococcus sp.培養株)とクリプト藻(Plagio-selmis sp.培養株)の取り込みの確認を行った。まず、Plagioselmisを放射性同位元素で標識してD.fortiiへ取り込まれるか確認を行った。明条件下で^<14>CO_2をPlagioselmisに与え標識化し、これをD.fortiiに与えたところ、D.fortii1細胞が2日で約1細胞のクリプト藻を取り込むとの結果を得た。同様の方法をSynechococcusに対しても試みたが、標識が困難であったため以下の方法を用いた。まずSynechococcusに対するウサギ抗体を作成し、これと、Synechococcusと混合インキュベートしたD.fortiiの樹脂包埋切片との反応を観たところ、D.fortiiの細胞内に抗体と反応する顆粒がみられた。次に、Synechococcus細胞を蛍光抗体によって染色し、D.fortiiと混合インキュベーションを行った。数日後にD.fortiiの細胞内に蛍光色素に染色されたSynechococcusが取り込まれていることが確認され、その数は2-6細胞程度であった。以上のようにD.fortiiによるSynechococcus、Plagioselmisの取り込みは確認されたものの、その取り込まれた細胞数は少なく、顕微鏡下における取り込み様式の確認には至らなかった。ただし、D.fortiiが細胞の後端部から袋状の器官を出し入れする行動が観察され、この器官が細藻の取り込みに関与している可能性が考えられた。また、Synechococcus、Plagioselmisと混合インキュベーションしたD.fortiiを蛍光顕微鏡で観察すると、その葉緑体の形態は混合区ごとに明らかに異なっていた。
|