1998 Fiscal Year Annual Research Report
農業技術開発における公的研究機関の役割と新技術普及に関する実証的研究
Project/Area Number |
09760199
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 巧 北海道大学, 農学部, 助教授 (40178413)
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Keywords | 農業技術 / 農業機械 / プレシジョンファーミング / 野菜作 / 試験研究 |
Research Abstract |
木研究では、農業機械の開発に焦点を据え民間の技術開発と公的試験研究機関の技術開発の特質について分析を行った。現在のわが国の農機具メーカーでは稲作関連農機の売り上げが大部分を占めていた。しかし昨今、稲作を取り巻く状況は減反政策の強化や市場の成熟から大きな成長が見込めなくなった。景気低迷は農家の農外収入を激減させ、このことが農機具需要の低迷に拍車をかけている。そこで、各農機具メーカーは稲作偏重からの脱却を目指し野菜の栽培体系に対応した農機具の開発に力を注いでいる。「低価格」「高機能化」「野菜作対応」をキーワードに開発を進めている。さらに、定年帰農が増加していることからギアのシフトチェシジが不要な機械やエアコンつき機械、高齢化と環境問題から機械の始動やメンテナンスが楽な排ガスを出さない電動農機の開発に従事している。これまで農業のプロを前提に新製品を開発してきたが、定年帰農や新規参入者を対象に誰でも簡単に操作可能で農作業ができる機械の開発を目指している。野菜作は手作業が多く、将来確実に農機具に対する需要が伸びる領域と予測し特に収穫機の開発に力を入れている。民間のメーカーは需要動向に対応し、しかも開発コスト、リスクの小さい機械の開発に乗り出している。本研究で調査事例農家は、農家の立場から農機改造を続けていた。特に乗用除草機は無農薬栽培を目指す農家グループでは不可欠となっていた。これらの農家グループは深層追肥機の製作も手がけていた。一方、農業試験研究機関は正確な自動運転を可能にする無人トラクターなどの開発に着手している。これらの技術はGPSや光ファイバージャイロなどを用いた高度な情報処理システムを必要とする。これまで長年の経験と勘に頼ってきた農業を最先端の精密制御技術でもって代替させていた。また、精密農法(PF:プレシジョンファーミング)向けの次世代農機具の開発やそのための基礎的研究としてセンサーの研究に乗り出している。PFのための技術は機械メーカーだけで開発できる技術ではなく栽培方法といったソフト技術も重要である。より一層の省力化・低コスト化や環境保全型技術が求められる将来に向け研究開発を行っている。公的研究機関はこのような、開発に長期間を有する応用的・基礎的な領域にかかわって技術開発を行っていた。
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