1998 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン様成長因子^Iの生理活性を増強するcAMP依存性チロシンキナーゼの探索
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09760250
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伯野 史彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282700)
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Keywords | インスリン様成長因子^I / チロシンキナーゼ / 情報のクロストーク / cAMP |
Research Abstract |
ラット甲状腺由来細胞FRTL-5細胞は、甲状腺刺激ホルモンであるTSHまたはcAMP情報伝達系を活性化する薬剤で長時間前処理した後IGF-Iで処理することにより、それぞれを単独で処理した場合に比べて相乗的にDNA合成が増強される。またこのTSHによるいわゆるprimingは、1)チロシンキナーゼに対する特異的な阻害剤であるgenisteinによって阻害される、2)DNA合成の阻害剤であるcyclohexymideによって阻害される、3)TSH処理に依存してチロシンリン酸化の増加するタンパク質が細胞内に存在する、ことから、cAMP経路の長時間の活性化によってあるチロシンキナーゼが合成され活性化されて、primingに重要な機能を果たしている可能性が考えられた。 本研究はラット甲状腺由来細胞FRTL-5細胞を用いてcAMP刺激によって発現量または活性の変化するチロシンキナーゼ遺伝子のクローニングを目的としている。cAMPのアナログであるBt_2cAMPで長時間処理した細胞と処理していない細胞とから抽出したRNAを鋳型とし、チロシンキンナーゼで保存されたアミノ酸配列から作製されたプライマーを用いてRT-PCRを行い、チロシンキナーゼ遺伝子のクローニングを試みた。その結果、現在までに既知のチロシンキナーゼが10種類単離された。このうち、JAKlおよびp56tckに対して特異的なプライマーを作製し、定量的RT-PCRを行うと、p56tck遺伝子の転写量がcAMP刺激により顕著に増加することが示された。今後、この遺伝子に関してcAMP処理によるタンパク質量、活性化量の変化についても検討を加えていきたい。
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[Publications] 高橋 伸一郎、伯野 史彦: "インスリン様成長因子の細胞内シグナル伝達" ホルモンと臨床. 46(2). 89-103 (1998)
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[Publications] Koide,T.et.al.: "Insulin-like growlh factor potentiales protein synthesis induced by thyrotropin in FRTL-5 cells:Comparison of induction of protein synthesis and DNA synthesis." Endocrine Journal. 45(2). 151-163 (1998)
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[Publications] 高橋 伸一郎、伯野 史彦: "インスリン様成長因子をめぐる話題" BIO Clinica. 13(11). 963-969 (1998)