Research Abstract |
陰核した未受精卵への核移植に見られる「初期化」減少を探ることを目的に,研究を実施した。 本年度は,「初期化因子」の特質を検討することを目的としておこなった。すなわち,(1)「初期化因子」が存在する細胞質および存在しない細胞質を作出すること,ついで,(2)それらの雑種卵細胞質を作り出し,それぞれをレシピエント卵細胞質として,14.5-16.5日齢マウス胎子期生殖細胞をドナー核とした核移植を行なった。「初期化」の指標は,胚盤胞への発生能とした。 (結果)(1)除核未受精卵をレシピエント卵細胞質として用いて,核移植をおこなったところ,7から30%(平均16%)が胚盤胞へ発育した。この区を対照区として,(2)除核前核期卵をレシピエント卵細胞質として,核移植をおこなったところ、4細胞期以降へ分裂するものは,まったくみられなかった(0/41)。次に,(3)除核未受精卵に前核期卵細胞質を少量融合したもの,および,(4)逆の組み合わせの細胞質を作出し,それぞれをレシピエント卵細胞質として,上記と同様の核移植をおこなった。その結果,(3)では,0-47%(平均32%)が胚盤胞へ発育し,(4)では,胚盤胞へ発育したものはみられなかったが,4細胞期へ発育するものが10%,8細胞期へ発育するものが3%みられた。 以上の結果から,(1)除核未受精卵細胞質中には,なんらかの「初期化因子」が含まれること,:(2)除核前核期卵には,含まれないこと,(3)除核前核期卵細胞質の中に,「初期化因子」を積極的に分解する因子が存在するというよりは,除核前核期卵細胞質中には,その因子の絶対数が減少している,という可能性が示唆された。 来年度以降は,これらの細胞質中から,「初期化因子」を単離し,その実態を追求していきたいと考えている。
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