1997 Fiscal Year Annual Research Report
動物ヘルペスウイルスの宿主特異生の検討:赤血球凝集活性に注目して
Project/Area Number |
09760271
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
前田 健 山口大学, 農学部, 助教授 (90284273)
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Keywords | ネコヘルペスウイルス1型 / イヌヘルペスウイルス / 赤血球凝集素 / 宿主域 / ヘパラン硫酸 / gD |
Research Abstract |
ヘルペスウイルスの赤血球凝集素が宿主域を規定しているという仮説を証明するため、ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)と同様に宿主域が狭く、イヌの赤血球を凝集することが知られているイヌヘルペスウイルス(CHV)を用いて以下の実験を行った。 CHVのgDをCOS細胞を用いて発現に成功した。次にFHV-1gDあるいはCHVgD発現細胞を用いてネコの赤血球あるいはイヌの赤血球に対する吸着反応を行ったところ、FHV-1gD発現細胞はネコの赤血球のみを、CHVgD発現細胞はイヌの赤血球のみを吸着した。CHVgDの結合は宿主(イヌ)の細胞に特異的である可能性が示された。 アルファヘルペスウイルス亜科に属するウイルスは、細胞表面のヘパラン硫酸とgCとの結合により細胞に吸着することが予測されている。そこで、HSV-1,PRV,BHV-1,FHV-1のネコ腎由来培養細胞(CRFK)への感染がヘパリンにより阻害されるかを検討した結果、FHV-1,PRV,BHV-1のCRFK細胞への感染はウイルス接種液にヘパリンを添加することにより阻害され、その阻害はヘパリンの濃度に依存していた。この結果、FHV-1もまた他のアルファヘルペスウイルスと同様にほとんど全ての細胞上に存在するヘパラン硫酸に結合する可能性が示された。次にFHV-1のどの蛋白がヘパリンに結合するかをヘパリンカラムを用いて検討した結果、FHV-1gCがヘパリンに特異的に結合することが示された。この結果より、FHV-1gCと細胞表面上のヘパラン硫酸が結合することにより細胞への吸着が起こることが示された。 これまでのデータから、FHV-1の感染は他のヘルペスウイルスと同様にウイルスエンベロープ上に存在する糖蛋白gCと細胞膜上に存在するヘパラン硫酸との結合により細胞への吸着が起こることが示され、次の段階でFHV-1gDは他のヘルペスウイルスとは異なるネコの細胞特異的なレセプターを認識していることが示された。これにより宿主域の狭いヘルペスウイルスは宿主域の広いヘルペスウイルスとは異なる細胞への感染機序を有している可能性が示された。この知見はヘルペスウイルスの宿主域の研究に新たな示唆を与えることが出来るものと考えられる。
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[Publications] Maeda,K., Xuan,X., Kawaguchi,Y., Ono,M., Yokoyama,N., Fujita,K., Tohya,Y.,and Mikami,T.: "Characterization of canine herpesvirus glycoprotein D (hemagglutinin)." Journal of Veterinary Medical Science. 59. 1003-1009 (1997)
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[Publications] Maeda,K., Yokoyama,N., Fujita,K., Xuan,X.,and Mikami,T.: "Role of one N-linked oligosaccharide chain on canine herpesvirus gD in its biological activity." Journal of Veterinary Medical Science. 59. 1123-1128 (1997)
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[Publications] Maeda,K., Yokoyama,N., Fujita,K.,and Mikami,T.: "Identification and characterization of the feline herpesvirustype 1 glycoprotein C gene." Virus Genes. 14. 105-109 (1997)
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[Publications] Maeda,K., Ono,M., Kawaguchi,Y., Okazaki,K., Yokoyama,M., Tohya,Y.,and Mikami,T.: "Adhesion of insect cells expressing the feline herpesvirustype 1 hemagglutinin (gD) to feline cell lines." Journal of Veterinary Medical Science. 59. 217-219 (1997)
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[Publications] Maeda,K., Yokoyama,N., Fujita,K., Maejima,M.,and Mikami,T.: "Heparin-binding activity of feline herpesvirus type 1 glycoproteins." Virus Research. (In Press). (1997)