1997 Fiscal Year Annual Research Report
いわゆるトリの神経膠腫に関する実験病理学的ならびに神経病理学的研究
Project/Area Number |
09760281
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
落合 謙爾 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 講師 (80214162)
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Keywords | グリオーマ(神経膠細胞腫) / 鶏 / 病理学 / レトロウイルス |
Research Abstract |
いわゆるトリの神経膠腫は散在性髄膜脳炎様の病巣を背景に星状膠細胞が多発性結節性に増殖する原因不明の疾患である。本研究ではトリの神経膠腫の本態を明らかにするため、元気消失、肉冠の褐色、脚弱、尾羽の下垂または貧血を示した本疾患罹患鶏2羽(2〜3歳)とこれらの同居鶏70羽(7品種、3ヶ月齡〜4歳)について病理学的検索を行った。意義ある病変を示したのはチャボ17羽で、臨床症状を示す2羽を含む計5羽に神経膠腫が認められ、このうち2羽は腎芽腫あるいは腎腺腫を併発していた。このほか、神経膠腫非罹患鶏1羽に腎芽腫が、17羽すべてに概ね全身諸臓器にわたるリンパ球増殖巣が16羽に血管の硬化性病変が見られた。検索鶏のいわゆるトリの神経膠腫は圧排性の結節性増殖を示し、組織学的には星状膠細胞ならびに間葉細胞の増殖と血管増生からなっていた。これらの背景には実質内ならびに髄膜下の血管壁内外のリンパ球浸潤と線維化、結節周囲の反応性神経膠症、ミクログリア結節および神経食現象が認められた。マッソントリクローム染色、PTAH染色および鍍銀法によって結節内外の血管の増殖が浮き彫りにされ、結節内には細網線維が産生されていることが確認された。また、抗GFAP、抗PCNAならびに抗トリ白血病ウイルス(ALSV)抗体を用いた免疫組織学的検索では、結節内の細胞はGFAP弱陽性から陰性で、そのほとんどがPCNA陽性を示し、さらに一部の細胞がALSV抗原陽性となった。超微形態学的検索では結節を構成する細胞に径70〜100nmのウイルスの増殖と出芽像が認められた。発症した鶏2羽を含む計3羽の血清中には抗トキソプラズマ抗体は検出されなかった。以上のように、結節内の細網線維の増殖、結節内の構成細胞の細胞増殖能の亢進を意味する抗PCNA抗体の免疫染色結果、抗ALSV抗体を用いた免疫染色結果ならびに電顕所見によって、本疾患の結節はALSV感染に起因する膠性間葉性混合腫瘍であることが示唆された。
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