Research Abstract |
正常の肝星細胞は,レチノイドを細胞質内に豊富に蓄えているが,星細胞の活性化とともにレチノイドが放出されることが知られている。さらに,レチノイドが肝線維化の発生,進展を抑制することや,筋線維芽細胞様に形質転換した細胞を再び星細胞様の形状に戻すことが報告され,レチノイドが星細胞の活性化や,肝線維化と深く関わっていることが明らかとなってきている。そこで,今回,レチノイドを放出した活性化星細胞とレチノイドを豊富に蓄えた正常星細胞において,どのような遺伝子発現の差異が認められるかを検討した。ラット培養星細胞を用い,Suppression subtraction hybridization法を行ったところ活性化星細胞に特異的に発現する13の scquenceを得た。その内訳は,活性化星細胞で既にその発現が知られているα-SMA,laminin β,entactin,oxidatitive LDL receptorの遺伝子4個,未知遺伝子が4個,残る5個は星細胞に発現することが報告されていない既知遺伝子であった。第3番目のグループのひとつが,ラットプリオン遺伝子の421bp-837bpに一致した。このcDNAをプローブとし,ノーザンブロットを行ったところ,分離直後の星細胞には,プリオン遺伝子の発現は認められなかったが,分離3日目より発現が確認でき,培養時間に依存して発現が増強し,14日目にピークに達した。In vivoにおけるプリオン遺伝子の発現を,四塩化炭素障害肝で確認したところ,線維性隔壁に沿って,プリオン陽性細胞が認められた。さらに蛋白レベルでの発現を,ウエスタンブロットで確認すると,分離直後の星細胞にはプリオン蛋白の発現は認められず,培養時間に依存して発現が増強し,7〜14日にピークとなった。In vivoにおけるプリオン蛋白の発現は,四塩化炭素障害肝での線維性隔壁,胆管結紮障害肝での門脈領域,中間帯の類洞壁に強く認められた。また、免疫電顕による観察では,星細胞の細胞膜にプリオン蛋白の発現が確認された。以上,プリオン遺伝子ならびに蛋白の発現が,星細胞の活性化に伴って増強することが,明らかとなった。
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