1997 Fiscal Year Annual Research Report
リンパ動態・組成を指標とした微小リンパ管そしてリンパ節循環の病態生理学的研究
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09770024
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊古美 文隆 信州大学, 医学部, 文部教官助教授 (50262704)
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Keywords | リンパ液 / 毛細リンパ管 / 節前リンパ管 / 腫瘍 / リンパ行性転移 / リンパ節転移 / 物理的刺激 / 抗癌剤 |
Research Abstract |
腫瘍の転移に関する研究は現在まで非常に広範に行われているが、血行性転移に比べリンパ行性転移の機序に注目した研究はあまり進んでいない。そこで私共は、腫瘍細胞のリンパ系への移行を定量化するため、新しい生理学的な実験方法を用いて解析を行なった。ここでは、標識した腫瘍細胞を皮下組織へ注入し、それら細胞のリンパ液中への出現を観察した。加えて、これらのリンパ管内への移行に対する機械的なマッサージの影響も検討した。 実験には家兎を用い、節前リンパ管内へチューブを逆行性に挿入することによりリンパ液を採取した。次いで、皮下へFITCで蛍光標識したVX-2ウサギ胃癌細胞6×10^6ヶをリン酸緩衝液0.2ml中に分散した溶液を注入した。その後90分間リンパ液を採集し、リンパ流量とリンパ液中の有核細胞数と計測した。また、リンパ液中の粒子状成分の解析をフローサイトメトリーにより行なった。 その結果、横軸にリンパ流量を、縦軸にリンパ液中の腫瘍細胞濃度を取り、得られたデータをこの中にプロットすると、マッサージを行なわなかった場合比較してマッサージを行なった場合はこれらのプロットがより右上方に分布する傾向が認められた。そこで、リンパ液中の腫瘍細胞濃度とリンパ流量との積として表される腫瘍細胞の輸送量に関して、マッサージを行なった群と行なわなかった群とで比較してみると、マッサージを行うことによりリンパ系への腫瘍細胞の移行量が有意に増加するという結果が得られた。 以上より、皮下に注入された癌細胞はリンパ液中へ出現してくるということが判明した。さらに、物理的刺激が腫瘍の転移に関与している可能性が示唆された。また、この実験系を用いて腫瘍のリンパ行性転移機序の解明のみならず、各種抗癌剤の評価をも行ないうると思われる。
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