1997 Fiscal Year Annual Research Report
生合成初期における(Na,K)ATPaseサブユニット会合過程の解析
Project/Area Number |
09770027
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
野口 俊介 九州工業大学, 情報工学部, 助手 (30222194)
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Keywords | (Na,K)ATPase / (H,K)ATPase / Ca-ATPase / 生合成 / アフリカツメガエル卵母細胞 |
Research Abstract |
これまでの実験方法では5分以下の短時間ラベルでは免疫沈降を行った際,薄く不明瞭なバンドしか得られずこれ以上の時間分解能を得ることは困難だった.そこで先ず標識法の検討を行った.標識に用いる核種を^<14>Cからより高い放射エネルギーと比活性が得られる^<35>Sとし,標識アミノ酸としては一般に用いられるメチオニンと(Na,K)ATPaseα,β両サブユニットに多く含まれるシステインとの混合物を用いることとした.この改良により3分間の標識でも明瞭なバンドを得ることができ,α,β両サブユニットの生合成が一時中断した前駆体と推定されるやや小さい分子種,α^1,β^1がα,βに先行して現れることがはっきりと確認できた.免疫沈降された各バンドの放射能の定量からα^1,β^1は3分から5分まではその存在量は増加していくが,10分以内で増加は頭打ちとなり以後1時間までほぼ一定量で存在した.これに対して成熟型のα,βはやや遅れて5分からバンドが現れ始め,10分以内にα^1,β^1よりも多くなり,以後1時間までほぼ直線的に増加した.これらの結果はα^1,β^1前駆体である可能性を強く示唆する.そこでこのことをより直接的に証明すべくパルス-チェイスラベル実験を試みた.放射性アミノ酸を注射し3〜5分標識後,100〜1000倍量の非放射性アミノ酸を注射しチェイスを行った.ところが放射性アミノ酸の取り込みがすぐには停止せず,チェイス後30分までバンドの増加が認められた.このためα^1からα,β^1からβへの移行は明瞭にはできなかった.ここまでの結果はすべて(Na,K)ATPaseにおいてのものだが,同じくα,βのサブユニット構成を持つP型ATPaseである(H,K)ATPaseでも同様に生合成の一時中断が起こっている可能性が考えられる.また同じP型ATPaseであるがβサブユニットを持たない筋小胞体Ca-ATPaseではこのような現象が起こらないことも考えられ,これらが実際に確認できればα^1,β^1が前駆体であることの証拠の1つとなる.そこでこれらについても短時間ラベルを試みた.ブタ胃由来(H,K)ATPaseαサブユニット,ウサギ胃由来(H,K)ATPaseβサブユニットウサギ骨格筋由来Ca-ATPaseのcDNAクーロンをpSP65に組み込みそれぞれのcRNAを合成した.これらをアフリカツメガエル卵母細胞に注射し発現のチェックを行った.3日間[^<14>C]Leuで標識した後,抗ブタ(H,K)ATPase抗血清,抗ウサギCa-ATPase抗血清で免疫沈降すると期待される分子量のバンドが検出され発現していることが確認された.これらのcRNAを用いた短時間ラベルの実験を現在行っている.
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