Research Abstract |
小Maf群蛋白質は,DNA結合に関与する塩基性領域と二量体形成に関与するロイシンジッパー構造(b-ZIP構造)を持ち,それ自身でホモ二量体を,あるいは,CNC群,Bach群,Fos群といった他のb-ZIP構造をもつ蛋白質とヘテロ二量体を形成し,NF-E2配列を認識してDNAに結合する.我々はマウスにおける小Maf群蛋白質としてMafK,MafF,MafGを同定した.現在,小Maf群蛋白質の発現制御機構と機能の解析を,以下の実験により進行させている. 1.組織特異的な小Maf群蛋白質の発現制御機構を解明する目的で,トランスジェニックマウスの系を用いてmafK遺伝子の発現制御機構を解析している.申請者は,mafK遺伝子が二つの異なるプロモーター(IMエクソン/プロモーター,INエクソン/プロモーター)により発現を制御されていることを明らかにした.これまでに,初期中胚葉,間葉細胞における特異的発現を規定する領域がIMエクソン転写開始点の上流1kbp以内に存在すること,神経特異性を規定する領域がINエクソン転写開始点の上流0.7kbp以内に存在することを明らかにした.また,mafK遺伝子の3'側に造血細胞での発現に必要なエンハンサーが存在することを明らかにした.この領域には,造血系培養細胞で特異的なDNase高感受性領域が3つ400bpおきに集中している.現在,造血細胞特異的な転写調節の新しいメカニズムを解明するために,ここに存在するシス因子の同定を試みており,今後,そこに作用するトランス因子を明らかにしていく予定である. 2.小Maf群蛋白質の生体内における包括的な機能を解析するため,mafK,mafG,mafFそれぞれの遺伝子破壊実験をおこなった.mafK欠損マウスでは明らかな表現型は認められていないが,mafG欠損マウスでは血小板の減少と,平衡機能障害が認められている.mafF欠損マウスについては現在解析中である.今後,それぞれ単独の遺伝子破壊による表現型を詳細に解析するとともに,これらの交配による複合遺伝子破壊実験を行う予定である.また,野性型,ドミナントネガティヴ型の小Maf群蛋白質変異体をマウス個体に過剰発現させることにより,別の角度から小Maf群蛋白質の機能を検討しつつある.さらに,この過剰発現マウスを小Maf群蛋白質欠損マウスと交配し,遺伝子破壊による表現型のレスキューを試みる予定である.
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