1997 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母をモデル系とした真核生物のG1/S期制御機構の解析
Project/Area Number |
09770070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 晃一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90282615)
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Keywords | 細胞周期 / 分裂酵母 / G1 / S期 / サイクリン / 分化 / DNA複製 / ストレス |
Research Abstract |
G1/S期の進行にはCdc2/Cdkキナーゼ+G1サイクリンによる蛋白質のリン酸化と、転写因子によるG1/S期に特異的な遺伝子発現という2つの調節機構が協調的に働いている。分裂酵母ではRes1/2-Cdc10転写因子複合体が遺伝子発現制御の要であるが,最近Res1/2-Cdc10の活性化に関わるG1サイクリン遺伝子(pas1^+)を単離した。Pas1サイクリンはG1/S期の進行を活性化する一方で性分化過程を抑制することが見出され、増殖と分化のスイッチ制御に深くかかわる因子であることが示唆された。またRes1/2-Cdc10周辺で機能する因子を探索した結果、S期の制御に重要な役割を果たすspt1^+遺伝子の単離に成功した。 1Pas1サイクリンの機能解析:免疫沈降法を用いた解析より、Pas1サイクリンはCdc2キナーゼと細胞内で複合体を形成し得ることが判明した。しかし、B型サイクリン-Cdc2複合体とは明らかに基質特異性が異なっており、両者の間には明確な機能的差異が存在すると思われる。 2spt1^+遺伝子の機能解析:spt1^+遺伝子の過剰発現はDNA複製開始に関わる遺伝子(cdc18^+、cdc19^+、orp1^+など)の変異を抑圧できる。免疫沈降法を用いた解析によりSpt1タンパクは細胞内でCdc18タンパクと複合体を形成することを見いだした。更にspt1破壊株は種々のストレス刺激(高温、高浸透圧、低pH、DNA damageなど)に対し超感受性を示した。その際生存率は保たれていることから、ストレスに対する応答ではなく、その後の増殖再開過程に異常があると考えられる。以上の結果を考え合わせると、外界ストレスにより細胞周期が停止した際、Spt1がDNA複製の開始・進行を活性化することが細胞周期を再開させるために重要であるという仮説が成り立つ。現在この仮説を検証する研究を進めている。
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Research Products
(1 results)