1998 Fiscal Year Annual Research Report
プロテインホスファターゼ2Aの74kDa調節サブユニットδの機能解析
Project/Area Number |
09770081
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田邉 修 広島大学, 医学部, 講師 (70221398)
|
Keywords | プロテインホスファターゼ2A / 調節サブユニット / δサブユニット / B'サブユニット / 分裂酵母 / 遺伝子破壊株 / 増殖 / 細胞質分裂 |
Research Abstract |
1. 研究の背景 プロテインホスファターゼ2A(PP2A)は真核生物に広く分布し,代謝調節,細胞周期,DNA複製,細胞骨格の制御など多彩な細胞機能において重要な役割をになう。哺乳類のPP2Aは,触媒サブユニットCと調節サブユニットAとが結合した2量体,あるいはこれに第3のサブユニットが結合した3量体である。第3のサブユニットは複数の分子種からなる調節サブユニットで,B,B',δおよびPR72の各サブユニットが存在する。このうちδとB'とは高い類似性を有しており,一つのファミリー(δ/B'ファミリー)を構成する。δ/B'ファミリーはヒトでは5つの遺伝子にコードされる。これらの調節サブユニットはPP2Aの基質特異性や細胞内局在を制御しており,このようなサブユニット構造の多様性がPP2Aの機能の多様性の基盤となる。 2. 研究成果 分裂酵母にもδ/B'ホモログの遺伝子が2つ存在することを見いだし,pbp1^+,pbp2^+と命名した。PbP1^+遺伝子産物は548アミノ酸残基,pbp2^+遺伝子産物は627アミノ酸残基からなると推定された。これらとδとは約400アミノ酸残基にわたって,50%以上のアミノ酸が一致していた。pbp1^+遺伝子破壊株では,YPD培地上で低温および高温感受性の増殖障害が認められた。この増殖障害はpbp1^+とpbp2^+の二重破壊株ではより顕著であった。また,pbpl^+破壊株では,隔壁をもつ細胞の増加がみられた。pbp1^+,pbp2^+二重破壊株では,隔壁をもつ細胞がさらに増加し,細胞の伸長と多隔壁化がみられた。この二重破壊株では,細胞の枝分かれや,無核の細胞も認められた。以上の結果から,pbp1^+とpbp2^+は,細胞増殖,細胞質分裂,細胞の極性の制御,有糸分裂における染色体の分離などにおいて,一部重複した機能をはたしていることが明らかになった。pbp1^+破壊株にみられる異常は,ヒトδのcDNAを導入することにより抑圧されたことから,δの機能は進化の過程で高度に保存されていることがわかった。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Hirofumi Usui: "Activation of protein phosphatase 2A by cAMP-dependent protein kinase-catalyzed phosphorylation of the 74-kDa B"(δ) regulatory subunit in vitro and identification of the phosphorylation sites" FEBS Letters. 430. 312-316 (1998)
-
[Publications] Yasumasa Nishito: "Direct metal analyses of Mn^<2+>-dependent and -independent protein phosphatase 2A from human erythrocytes detect zinc and iron only in Mn^<2+>-dependent one" FEBS Letters. in press. (1999)
-
[Publications] 田邉修: "細胞機能におけるプロテインホスファターゼ2Aの意義" 蛋白質 核酸 酵素. 43・8. 1013-1020 (1998)