1997 Fiscal Year Annual Research Report
新規ROR-Cリガンドによる痛覚反応アロディニア誘導に関与する分子のクローニング
Project/Area Number |
09770085
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
芦高 恵美子 関西医科大学, 医学部, 助手 (50291802)
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Keywords | アロディニア / ノシセプチン / ノシスタチン |
Research Abstract |
我々は、オピオイド受容体μ、κ、δの類縁体であるROR-C受容体の内因性リガンドとして、ウシ脳より、17個のアミノ酸からなるペプチドの単離、同定に成功した。本ペプチド(ROR-Cリガンド;ノシセプチン;オ-ファニンFQ、以下ノシセプチンを用いる)が、オピオイドペプチドと相同性を有しているが、興味深いことに、鎮痛作用のあるオピオイドペプチドとは対照的に、痛覚過敏反応であるアロディニアを長期に誘導することを明らかにした(Okuda-Ashitaka E.et al.Mol.Brain.Res.43,96-104,1996)。ノシセプチンによるアロディニア誘導の機構を明らかにするため、まず、その前駆体構造を明らかにし、以下の知見を得た。 1,ウシ海馬、梨状葉のcDNAライブラリーより、ウシprepronociceptin cDNAを単離した。その構造は、オピオメラノコルチン前駆体と似ており、Lys-Argに囲まれたノシセプチンや数種の推定されるペプチドが存在していた。2,推定されるペプチドの中で、ノシセプチンの上流に存在する17個のペプチド(ノシスタチンと名付ける)が、ノシセプチンによるアロディニアおよび痛覚過敏反応を抑制した。ノシスタチンは、プロスタグランディンE_2による痛覚反応も抑制した。種間で保存されているノシスタチンのC末端の6つのペプチドのみで、アロディニアの抑制活性を示した。3,さらに、ウシ脳より内因性のノシスタチンを単離、同定した。4,また、ノシスタチンに対する抗体を作製し、前投与すると、ノシセプチンによるアロディニア誘導の閾値を減少させた。5,ノシスタチンは、ノシセプチン受容体には、結合しなかったが、脳、脊髄の膜画分において結合能が見られた。 以上の結果より、ノシスタチンは、ノシセプチンと同じ前駆体より切り出される新しい生理活性ペプチドであり、これら2つのペプチドは、痛みの伝達において相反する作用を示すことが明らかとなった。
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