1997 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄運動神経における細胞死調節因子としてのスフィンゴ脂質の機能解析
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09770087
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
入江 史敏 理化学研究所, 糖細胞情報研究チーム, 基礎科学特別研究員 (90291054)
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Keywords | 脊髄 / 運動神経 / スフィンゴ脂質 / セラミド / 細胞死 / アポトーシス |
Research Abstract |
最近、細胞膜スフィンゴ脂質の1つであるセラミド(Cer)は細胞死誘導性のストレスによってその細胞内濃度が上昇し、神経系細胞において細胞死抑制作用を示すことが報告されている。本年度は新たな神経細胞死調節因子として、ラット胎仔から分離した精髄運動神経の初代培養系におけるCerの機能について以下の結果を得た。 運動神経の培養性に細胞膜透過性のCerを添加したところ、低濃度(<2.5μM)では濃度依存的に細胞死(アポトーシス)の抑制、軸策伸長の促進が確認された。ところが高濃度(<10μM)では逆にアポトーシスを促進することが明らかとなった。またこれらの現象は1)Cerに特異的であり、その代謝産物であるスフィンゴシンやグルコシルセラミドによるものではない、2)Cer産生酵素であるスフィンゴミエリナーゼ(SMase)による細胞内Cer上昇によっても細胞死を抑制する、ことが判明した。これらの結果は細胞内のCer濃度が運動神経の運命を決定しているものと考えられた。運動神経の細胞死誘導シグナルとして、JNK(c-Jun kinase)の活性化、ROS(reactive oxigen species)の産生などが知られている。CerはJNKの活性に何の影響も与えないが、ROSの産生を抑制している可能性が以下の実験によって示された。抗酸化因子であるGSH(還元型グルタチオン)合成の阻害剤投与による運動神経細胞死をCerが抑制し、上記と同様にこの効果はCerに特異的であった。また細胞内Cer調節機構として、既知の神経栄養因子では酸化ストレスからの回復が見られないことより、運動神経においては栄養因子が細胞内Cer量を抑制している可能性は否定的となった。新たな可能性を示唆する結果として、運動神経を除いた脊髄細胞の培養上清中にSMase活性を検出することができた。どのような反応に対してSMaseが分泌され、運動神経内のCer濃度を調節しているのかは今後の課題と考えている。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yuki N.,Tagawa Y.,Irie F.,Hirabayasi Y.,and Handa S.: ""Close association of Guillain-Barre syndrome with antibodies to minor monosialogangliosides GM1b and GM1α"" J.Neuroimmunol.74. 30-34 (1997)
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[Publications] Tagawa Y.,Irie F.,Hirabayasi Y.,and Yuki N.: ""Cholinergic neuron-Specific ganglioside GQ1bα a possible target molecule for serum IgM antibodies in some patients with sensory ataxia"" J.Neuroimmunol.75. 196-199 (1997)
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[Publications] Odaka M.,Yuki N.,Yoshino H.,Kasama T.,Handa S.,Irie F.,et al: ""N-glycolylneuraminic acid-containing GM1 a putative immunogen in Guillain-Barre syndrome after ganglioside administration"" Annal.Neurol.in press. (1998)
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[Publications] 入江史敏、平林義雄: "「神経系におけるスフィンゴ脂質の新たな機能」" 実験医学. 15. 1494-1498 (1997)