1997 Fiscal Year Annual Research Report
血管系細胞の細胞間シグナル伝達系に対する酸化ストレスの影響
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09770093
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 英世 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (60235380)
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Keywords | 酸化ストレス / 一酸化窒素 / 一酸化炭素 / 血管細胞 / マクロファージ / 低密度リポタンパク質 |
Research Abstract |
近年、動脈硬化の成立には酸化的に変性した低密度リポタンパク質(LDL)と血管系細胞やマクロファージとの相互作用が重要であることが知られるようになってきた。本研究では、血圧調節や動脈硬化おいて生理的、病理的にも重要な役割を担うことが最近明らかとなりつつある、一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)のこれらの細胞における産生系を調べた。また、それが酸化ストレスによってどのような影響を受けるかを調べ、以下のような結果を得た。 1.マウス腹腔マクロファージにおいて、酸化LDLや他の酸化ストレスを添加することにより、ヘムオキシゲナーゼの誘導が見られた。この時、アルギニンの細胞内への輸送活性に変化はなく,NO産生もほとんと見られなかった。 2.マクロファージを低濃度の細菌性リポ多糖とインターフェロンγで刺激すると、アルギニンの輸送活性が上昇し、NO産生も上昇した。この時、ヘムオキシゲナーゼの誘導は認められなかった。 3.ヒト血管平滑筋細胞において、酸化LDLや他の酸化ストレスによってマクロファージと同様にヘムオキシゲナーゼの誘導が見られた。また、この時、アルギニンの輸送活性は変化せず、NOの産生も認められなかった。 4.血管平滑筋細胞を種々のサイトカインで刺激することにより、NO産生の上昇が認められたが、ヘムオキシゲナーゼの誘導は見られなかった。 以上の結果から、COの産生系とNOの産生系は異なる制御を受けていることが示唆された。酸化ストレスが加わった時には、ヘムオキシゲナーゼが誘導されることによってCO産生が高まり、NOの代替的な機能を果たす可能性が考えられた。 今後は、血管内皮細胞についてもCOとNOの産生系を調べ、COとNOを介する細胞間シグナル伝達系の制御に対する酸化ストレスの影響についてさらに検討する予定である。
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