1998 Fiscal Year Annual Research Report
胃悪性リンパ腫の発生母地としての慢性胃炎・慢性胃潰瘍の病理学的検討
Project/Area Number |
09770114
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
谷澤 徹 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (00227232)
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Keywords | 胃悪性リンパ腫 / ヘリコバクター・ピロリ / 慢性胃炎 |
Research Abstract |
1. 従来のヘリコバクター・ピロリの検討は全て生検組織標本で行われてきたが,ギムザ染色を施せば手術材料でも十分検討可能であり,菌や炎症所見の分布を検討するためには手術材料が有用であることが今回の検索で明らかとなった。 2. ヘリコバクター・ピロリの感染が,リンパ濾胞,特に二次リンパ濾胞の過形成の主要な原因となっていることが明らかにされた。 3. リンパ濾胞過形成の著しい症例を濾胞性胃炎と定義し,他の症例をヘリコバクター・ピロリ感染及び粘膜萎縮の有無により分類したものと比較検討した。 (1) その結果,濾胞性胃炎は若年者に見られ,全例ヘリコバクター・ピロリ陽性でその感染量は多く,活動性慢性胃炎の特殊な病態であることが示唆された。 (2) また,濾胞性胃炎の背景粘膜の状態は悪性リンパ腫と良く類似しており,悪性リンパ腫の前駆病変であることが推測された。 (3) 加齢と共に粘膜の萎縮や腸上皮化生が進行するにしたがって,ヘリコバクター・ピロリの感染量は減少し,濾胞性胃炎の多くは非活動性の慢性萎縮性胃炎へと移行していくことが示唆された。 (4) 濾胞性胃炎に見られるリンパ濾胞過形成が,ヘリコバクター・ピロリの感染量の多い場合に一過性に見られる特殊な病態であるのか,あるいは,宿主のヘリコバクター・ピロリに対する反応性の特異性に起因した病態であるのかは不明であった。 4. リンパ濾胞過形成の状態が維持されるためには,ヘリコバクター・ピロリの抗原刺激が持続することが重要であり,この状態が胃悪性リンパ腫発生の母地となると考えられた。したがって,濾胞性胃炎症例におけるヘリコバクター・ピロリの除菌治療により,胃悪性リンパ腫の発生予防効果が期待できる。
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[Publications] 谷澤 徹: "胃悪性リンパ腫の遺伝子学的検討" 日本病理学会誌. 86(1). 320-320 (1997)
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[Publications] 岩崎 正幸: "PCR法とPCR-SSCP法を用いた消化管悪性リンパ腫におけるclonalityの検出" 臨床検査. 41. 959-962 (1997)
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[Publications] 山下 俊樹: "胃悪性リンパ腫の発生とHelicobacter pyloriの関連" 日本病理学会誌. 87(1). 339-339 (1998)
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[Publications] 馬 志強: "胃悪性リンパ腫の発生母地としての胃炎症性疾患におけるH.pyloriとリンパ組織過形成の関連について" 日本病理学会誌. 87(1). 339-339 (1998)
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[Publications] Ohkusa Toshifumi: "Disappearance of Hyperplastic polyps in the stomach after eradication of Helicobacter pylori." Annals of Internal Medicine. 129(9). 712-715 (1998)
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[Publications] 谷澤 徹: "消化管粘膜下腫瘍の病理" 消化器料. 27. 135-141 (1998)
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[Publications] 谷澤 徹: "いわゆるRLHとMALTリンパ腫" 胃と腸. 33. 469-470 (1998)