1997 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞の骨転移巣形成におけるがん細胞と破骨細胞及び骨芽細胞との相互作用
Project/Area Number |
09770120
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
有廣 光司 広島大学, 医学部, 講師 (70232064)
|
Keywords | 乳癌 / 骨転移 / 接着分子 / 骨基質 / I型コラーゲン / 肝細胞増殖因子 / KAI-1 |
Research Abstract |
がん細胞が骨に転移巣を形成する場合、腫瘍細胞の転移部位への接着活性と、同部での増殖能の獲得が大きな因子になると考えられる。そこでまずヒト女性乳癌を対象にして5年間以上の無再発群330例、骨転移を初回再発とする群32例を抽出し、それぞれ無作為に選んだ6例の乳癌凍結組織を用いて、ウエスタンブロット法により骨組織に対する細胞間接着分子の発現を検討した。その結果、骨基質をリガンドとするαvβ3インテグリンは骨転移例と非再発例において、それぞれ6例中4例(67%)及び6例全例(100%)に、骨のI型コラーゲンをリガンドとするα2β1インテグリンはそれぞれ83%及び100%に、更にα3β1インテグリンはいずれも83%に発現を認め、有意の差はなかった。次に局所での増殖促進因子の発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、局所での浸潤や破骨細胞の活性化による骨吸収を促進する肝細胞増殖因子(HGF)に対する受容体(c-Met)の発現は、乳癌47例中26例(55%)に認めた。また転移抑制因子KAI-1の発現は、非癌部乳腺組織37例中31例(84%)の乳管あるいは小葉上皮細胞に認めたが、乳癌組織では47例中27例(57%)にのみ弱い発現を認め、乳癌細胞においてKAI-1の発現が消失あるいは減弱する傾向にあった。一方、これらの発現や消失と骨転移との相関はなかった。今後は、MDA-MB-231などのヒト乳癌細胞と、様々な骨基質や血管内皮細胞をコートした接着能解析用のプレートを用いて接着活性の有無を評価し、その細胞表面の既知の接着分子に対する抗体を用いて予めがん細胞の接着分子をブロックした後、接着能解析を再び行い、接着活性の変化の有無を検討する。
|