1997 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌および前癌病変配因の微細形態と西流変化に関する研究
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09770125
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山本 隆嗣 大阪市立大学, 医学部・第2病理学, 助手 (80275271)
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Keywords | 肝細胞癌 / 肝腺腫様過形成 / 西洞 / 毛細血管新生 / 類洞毛細血管化 |
Research Abstract |
肝細胞癌(HCC)は動脈より栄養され、門脈-肝静脈は流出血管とされてきた。またHCC内血洞はKupffer細胞、伊東細胞などを有さず、構造的にも毛細血管であるとされ、血管新生により動脈血を獲得するものと考えられてきた。しかし、近年診断技術の進歩によりに伴い、動脈造影で描出されないHCCが近年報告されている。今回我々はHCC症例の切除標本を用いて更にその支配血流やHCC内血管構造を臨床病理学的に観察し、腫瘍発生時の血管獲得の新しい機序について以下のように考察した。 【方法】(実験1)2cm以下のHCC57例、腺腫様過形成(AH)8例の血洞において、毛細血管の指標である第VIII因子関連抗原(F-VIII)発現の有無を、腫瘍分化度、腫瘍被膜の有無、肝動脈造影時の腫瘍像と比較検討した。(実験2)HCC切除中に採取したHCC標本27例の類洞構造を透過電顕で観察し、腫瘍径、分化度、腫瘍被膜の有無、肝動脈造影像と比較検討した。 【結果】(実験1)2cm以下のHCCでF-VIII陰性群は32.3%であった。動脈造影像陰性群は42.9%、腫瘍被膜のないものは38.6%であった。これらの因子はいずれもF-VIII陰性群と正の相関を示した。またAHではF-VIII陰性群は75%、動脈造影像陰性群は85.7%、腫瘍被膜のないものは100%であった。(実験2)腫瘍平均径は3.8cmで全体の40.7%に類洞構造を認めた。他の因子と検討したところ、腫瘍被膜を有さないもの、動脈造影陰性群と相関の傾向を認め、腫瘍径とは統計学的に有意な相関関係を認めた。 【考察】HCC血洞は必ずしも毛細血管構造ではなく、肝特有の類洞構造のものもあり、それらは高分化で小さいHCCに多くみられ、門脈血流の残存するものが多かった。以上のことより、血管新生による血管獲得の機序のみならず、類洞を利用し徐々に類洞を形態的に毛細血管に変化させていく、毛細血管化による獲得機序が示唆された。
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Research Products
(2 results)