1998 Fiscal Year Annual Research Report
発現調節可能な系によるがん抑制遺伝子p53とRBの機能とその作用機構の解析
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09770139
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
大川 恵三 弘前大学, 医学部, 助手 (70250206)
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Keywords | がん抑制遺伝子 / p53遺伝子 / RB遺伝子 / p21遺伝子 / E2F1遺伝子 / 細胞周期 / 細胞分化 / 骨芽細胞 |
Research Abstract |
p53とRBが共に不活性化している骨肉腫細胞株Saos-2から、遺伝子導入により単離したp53・p21・RBの各発現誘導細胞を用いて各々の細胞周期調節機構を比較した。RBファミリー遺伝子であるp107とp130の発現は、RBでp107が減少し、p53でpl30が増加したが、p21ではどちらも変化がなかった。E2F1感受性遺伝子thymidylate synthase(TS)・dehydrofolate reductase(DHFR)・B-MYBの発現は、RBではE2F1の発現低下に伴い減少したが、p53ではE2F1が減少しないにも関わらず、DHFRとB-MYBが低下していた。p21ではE2F1の増加に伴いDHFRとB-MYBが増加していたが、TSには変化がなかった。更に、正常型RBと変異型p53を発現している大腸癌細胞株DLD1から、遺伝子導入によりp53とp21の発現誘導細胞を単離し同様の解析を行った。その結果、いずれの発現誘導でもE2F1とE2F1感受性遺伝子の発現は低下し、Saos-2でのRB発現誘導の効果に類似していた。以上より、RBは強力にE2F1の発現自体を抑制しE2F1感受性遺伝子を調節する重要な因子であるが、p53はE2F1の発現変化やp21やRBに依存しなくとも一部のE2F1感受性遺伝子の発現を抑制し細胞周期を調節し得ることが示唆された。また、RBとp21の分化誘導作用についても骨肉腫細胞株Saos-2を用いて解析した。RBの発現でI型コラーゲンとオステオネクチンの発現は増加したが、骨芽細胞の分化に関わる転写囚子cbfa1の発現は変化せず、オステオポンチンの発現は検出されなかった。また、RBではVDRの発現は変化しないが、VitDの添加でI型コラーゲンの発現は更に増強した。一方、p21の発現でオステオポンチンとVDRの発現が増加したが、cbfa1とI型コラーゲンの発現は低下した。また、レチノイン酸の添加でオステオポンチンの発現は更に増加し、I型コラーゲンは更に低下した。以上より、RBとp21は骨肉腫細胞の分化を促進するが、p21はRBとは独立した異なる分化誘導作用も有すると思われた。
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Research Products
(1 results)