1998 Fiscal Year Annual Research Report
結腸癌細胞の浸潤・転移に及ぼす神経ペプチド:VIPの影響
Project/Area Number |
09770140
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
村田 純 富山医科薬科大学, 和漢薬研究所, 助手 (20262537)
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Keywords | VIP / 結腸癌細胞 / 癌浸潤 / 癌転移 / 細胞運動 |
Research Abstract |
研究代表者らは昨年度、神経ペプチド:Vasoactive Intestinal Polypeptide(VIP)が、in vitroにおいてマウスColon26-L5結腸癌細胞の基底膜浸潤を抑制し、その抑制機序として細胞の運動性を阻害することを見出すとともに、この癌細胞のマウス門脈内接種による実験的肝転移を著明に抑制することを報告してきた。本研究では、Colon26-L5細胞(L5細胞と略)の原発巣形成に及ぼす内因性VIPの役割を検討するため、癌細胞のマウス盲腸壁への移植モデルにおいてVIPレセプターアンタゴニストを用いて解析した。 1. 原発巣形成過程における内因性VIP濃度の経日変化 (1) 血中VIP濃度の経日変化-----L5細胞をBalb/cマウスの盲腸壁へ移植後10日目以降に門脈血中VIP濃度は、正常値(4.6×10^<-11>M)の約2倍程度(9×10^<-11>M)にまで増加した。 (2) 組織VIP濃度の経日変化-----L5細胞をマウス盲腸壁へ移植後15日目で盲腸非癌部のVIP濃度は、正常値(1.8×10^<-8>M)の約50%(9×10^<-9>M)にまで減少した。 同様の発現低下は、病理切片におけるVIPの免疫組織染色で認められた。 2. L5細胞の運動性に及ぼすVlPの影響 生理濃度付近(10^<-12>〜10^<-10>M)のVIPを用いてL5細胞の運動性に対する影響をトランスウェルチャンバーにて検討した結果、VIPはL5細胞の運動性を濃度および前処理時間に依存的に抑制した。さらに、モル濃度で100倍量以上のVIPレセプターアンタゴニストを添加することにより、VIPの細胞運動阻害活性は中和された。 3. 原発腫瘍の増殖、浸潤に及ぼす内因性VIPの影響 (1) 原発腫瘍の増殖に及ぼす内因性VIPの影響-----L5細胞をマウス盲腸壁へ移植後、翌日より連日にVIPレセプターアンタゴニストを尾静脈より計9回投与した結果、移植後10日目における腫瘍体積は、コントロール群と比較して増大した。一方、VIP投与群では、腫瘍体積が減少する傾向が認められた。VIP及びVIPレセプターアンタゴニストは、L5細胞のin vitroでの増殖には直接的な影響を与えなかった。 (2) 原発腫瘍の浸潤に及ぼす内因性VIPの影響-----上記投与群において癌細胞の周辺組織への浸潤度を検討した結果、VIPレセプターアンタゴニスト投与群では、腫瘍塊は粘膜層にまで浸潤し、微絨毛構造の著しい破壊が認められたのに対し、VIP投与群では、癌部は粘膜下層に留まり、微絨毛の保持が観察された。 以上の結果をまとめ現在、投稿準備中である。
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Research Products
(1 results)