1997 Fiscal Year Annual Research Report
イヌに見出される糞線虫とヒト糞線虫の異同に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
09770169
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
當眞 弘 琉球大学, 医学部, 助手 (80231447)
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Keywords | 糞線虫 / ヒト / イヌ / DNA解析 / PCR |
Research Abstract |
沖縄は糞線虫症の侵淫地域であり,今日なお多くの住民が本線虫に感染していることが知られ,重症化する例が後を絶たない.その感染者のほとんどが40歳以上の中・高年令者であり,若年層には保有者がほとんど見られないことから,現在では外界からの新しい感染はないものと考えられている.他方,ヒトの糞線虫はイヌに実験的に感染することから,本症は人畜共通寄生虫病のひとつと考えられ,また県下のイヌにはヒト糞線虫と形態的に区別し難い糞線虫が自然感染していることが確認されている.近年のペットブームによるヒトとイヌとの結びつきから糞線虫感染の保虫宿主としてのイヌの役割が注目されるようになった.しかし,これまで両者の糞線虫の異同について詳細に検討されたことなく,イヌからヒトヘの自然感染のリスクについても不明であることから,今回分子生物学的手法を用いて両者を比較,検討することを計画した. 本年度は糞線虫症患者数名よりヒト糞線虫を,また実験感染によりネズミ糞線虫2種の虫体を必要量確保し,ゲノムDNAを抽出した.手始めにチトクロームb遺伝子に注目し,遺伝子データバンクより得られたヒト糞線虫の塩基配列を参考に,任意の部分を増幅させるためにPCRプライマーを設計した.設計したプライマーはヒト糞線虫より得られたゲノムDNAとは反応が認められたが,2種のネズミ糞線虫のDNAとは反応しなかったため,現在新たなプライマーを試用しているところである.また,自然感染犬より回収した糞線虫幼虫を実験犬に感染させ,必要量の虫体を確保するための試みを行ったが,ヒト糞線虫の場合と異なり,増殖が認められなかった.今後,免疫抑制剤を多量に使用するなどして虫体の確保に努め,両者を比較検討する計画である.
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