1997 Fiscal Year Annual Research Report
向神経性ムンプスウイルス糖タンパクの分子生物学的・免疫学的研究
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09770209
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Research Institution | 国立予防衛生研究所 |
Principal Investigator |
棚林 清 国立感染症研究所, ウイルス製剤部, 主任研究官 (50197505)
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Keywords | ムンプスウイルス / 糖タンパク / 発現 / 細胞融合 / 免疫 |
Research Abstract |
ムンプスウイルスKilham株は幼弱ハムスターの脳内接種により脳炎を起こす向神経性のムンプスウイルス株であることが知られている。本研究では、このウイルス株の遺伝子cDNAから発現させた表面糖タンパク(F、HN)およびこれらに変異を導入したタンパクについて生物学的活性を分子レベルで解析するとともに、これらのタンパクを組換えワクシニアなどの技術を応用して実験動物に免疫して、ウイルス中和抗体、細胞性免疫の誘導能等の解析を行うことを目的とする。本年度はまずムンプスウイルスKilham株F、HN遺伝子の一次塩基配列及びアミノ酸配列を決定した。両遺伝子のコード領域においてこれまで報告されている他のムンプスウイルス株と塩基数アミノ酸数に差は無いが特異的配列を有していた。次にKilham株感染細胞用よりRNAを抽出しこれを鋳型にしてRT-PCRによりF、HN遺伝子のコーディング領域のcDNAを作製した。このcDNAをpGEMベクターのT7プロモーター下流にクローニングし組換えプラスミドを得、組換えワクシニアウイルス(vTF7.3)感染HeLa細胞にトランスフェクトしF、HNタンパクの発現を試みた。F、HNタンパクともに抗ムンプスウイルスウサギ血清及び抗Fまたは抗HNモノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法により特異蛍光が認められ発現が確認された。HN発現細胞においてはモルモット赤血球を用いた血球吸着反応が認められた。さらに、FタンパクをHNタンパクとともに細胞に発現させたところ細胞融合活性による巨細胞形成が認められた。これらのことはF、HNともに細胞表面までタンパクが輸送されかつ生物学的活性を有することを示している。今後は、HN遺伝子に変異を導入したタンパクの発現と抗原性の解析をするとともにF及びHN遺伝子を有する組換えワクシニアウイルスの作成を試みる。
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