1997 Fiscal Year Annual Research Report
HIV-1感染細胞特異的遺伝子導入法の開発に関する研究。
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09770210
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Research Institution | 国立予防衛生研究所 |
Principal Investigator |
俣野 哲朗 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 主任研究官 (00270653)
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Keywords | 遺伝子治療 / 標的細胞特異的遺伝子導入 / HIV-1 / MLV / エンベロープ / 膜融合 |
Research Abstract |
1 HIV-1感染細胞特異的遺伝子導入法の開発を目的としたレトロウイルスベクター作成を試みた。我々はこれまで、HIV-1レセプターであるヒトCD4とマウス白血病ウイルス(MLV)エンベロープ(Env)とのキメラ蛋白(CD4-Env)を作成したが、このCD4-Env発現ベクターDNAを、MLVを基にしたパッケージ細胞に遺伝子導入し、CD4-Envをウイルス表面に有するハイブリッドMLVベクターを産生するパッケージ細胞を作成した。この培養上清を用いて、HIV-1を発現するヒトHeLa細胞への特異的遺伝子導入を行ったが、導入効率は非常に低かった。 2 この特異的遺伝子導入効率の改善を目的として、レトロウイルスベクターが標的細胞に侵入する際の細胞膜融合機構を解析した。EnvとMLVレセプターとの相互作用を介する膜融合は、「レセプターとの結合過程」およびそれに引き続く「結合後膜融合過程」の2つのステップに分けられ、Env細胞外サブユニット(SU)が細胞表面上の「レセプターと結合」することにより、Env膜貫通サブユニット(TM)の立体構造変化が生じ「結合後膜融合過程」が進行すると考えられている。そこで、「レセプター結合能」は有するが「結合後膜融合能」を欠くEnvのTM変異体を作成し、「レセプター結合能」を欠くCD4-Envと共発現させたところ細胞膜融合が生じた。よって、CD4-Envは「結合後膜融合能」を有することが明らかとなった。HIV-1感染細胞特異的遺伝子導入においては、CD-4-EnvとHIV-1Envとの相互作用による膜融合が必要であるが、以上の結果から、CD4-Envは「HIV-1Envとの結合能」および「結合後膜融合能」の両方とも有するにかかわらず、CD4のHIV-1Envとの結合がTMの立体構造変化を正しく引き起こさないため、膜融合を効率よく生じないことが示された。
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