1997 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞分化過程におけるTCR遺伝子高次構造制御の分子機構
Project/Area Number |
09770224
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
穂積 勝人 東海大学, 医学部, 助手 (30246079)
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Keywords | T細胞 / 分化 / TCR遺伝子 / 転写制御 / 遺伝子再構成 |
Research Abstract |
胸腺内におけるT細胞の分化過程において、TCRα遺伝子の発現はβ遺伝子に較べて分化ステージ上明らかに遅れることが知られ、また遺伝子再構成も同様に遅れていることが最近報告者によって明らかにされた。両遺伝子の再構成反応は、Ig遺伝子とともにRAG遺伝子産物に依存することから、それらの細胞系列および分化ステージ特異性は、遺伝子再構成を受ける側の状態によって決定されるものと考えられる。これらの特異的制御機構は、対立遺伝子排除の分子機構とともに、抗原受容体の多様性創出過程における最大の未解明課題である。報告者は今年度の研究において、TCRα遺伝子のステージ特異性を制御する分子機構の解明を試みた。 その結果、(1)ステージの異なるTCRトランスジェニックマウス胸腺細胞および未熟T細胞ハイブリドーマの解析から、再構成型α遺伝子は、本来のα遺伝子構成およびgerm-line型転写(GL転写)が認められないIL-2R^+DNステージにおいてすでに発現が認められ、GL型α遺伝子の活性化には、再構成型α遺伝子を制御するTCRα遺伝子エンハンサー(Eα)とは異なるシスエレメントがさらに必要であること、(2)TCRα遺伝子のGL転写はJα49領域を含むものが主であること、(3)Jα49GL転写はCD3を介するpre-TCR様のシグナルにより誘導されること、(4)Jα49上流域に、Jα49GL転写が認められる細胞でのみ転写活性化能が認められる領域が存在すること、が明らかになった。 以上のことから、TCRα遺伝子のステージ特異性はEαのみならず、Jα49上流域に存在するシスエレメントの働きにより制御されていることが示唆された。またこれらの反応はpre-TCRからのシグナルによって誘導され、DNからDPへの分化反応(β-セレクション)とともに制御されている可能性が考えられた。
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