1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09770260
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
李 明鎭 神戸大学, 医学部, 助手 (20273766)
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Keywords | 東アジア / メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素 / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
東アジア諸国における成人病対策を促進することを目的として,動脈硬化性疾患や肥満に関わる遺伝子変異の検出を含む調査研究を行った.初年度の研究として,115人の日本人と84人の韓国人健常者を対象に,動脈硬化性疾患関連遺伝子であるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子のC677T異変を調査し,その頻度と民族間の疾病構造の差異を比較・検討した.採取した血液からDNAを抽出し,PCRでMTHFR遺伝子の増幅を行い,制限酵素HinfI消化後,アガロースゲルに電気泳動することでC677T変異の有無を判定した.その結果,日本人のC677T変異のアリル頻度は0.36,韓国人のアリル頻度は0.48であり,韓国人のアリル頻度は今まで報告されたどの民族よりも高値であった.遺伝子型別の構成を見ると,日本人はC/C(正常)44.3%,C/T(ヘテロ変異)40.0%,T/T(ホモ変異)15.7%であり,韓国人はそれぞれ13.1%,77.4%,9.5%であった.韓国人のC/T変異率は最も高い数値を示したが,T/T変異率は日本人より低かった.WHO資料をもとに各民族別死亡原因を比較した結果,韓国人の高血圧性疾患による死亡率が日本人の約3.9倍,西洋人の1.8〜5,5倍にものぼり,MTHFR遺伝子変異との関連性が疑われた.今後の研究として,中国人の試料を用いて同様の実験を行うとともに,肥満関連遺伝子と知られるβ3アドレナリンレセプター遺伝子のTrp64Arg変異率を調べる予定である.また,対象の健康診断試料から得られた血圧やBMIなどの測定値と遺伝子形を統計学的に比較・検討することで,これら遺伝子変異と成人病発症との関連性を探ることも計画している.
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