1997 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺癌の地理的分布と環境中の重金属濃度に関する研究
Project/Area Number |
09770278
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高木 晴良 帝京大学, 医学部, 助手 (90187930)
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Keywords | 前立腺癌 / 年齢調整死亡率 / 地理的分布 / 地域集積性 |
Research Abstract |
1996年における日本の前立腺癌の年齢調整死亡率は8.6(人口10万対)であり、10年前の154%(5.6)、20年前の215%(4.0)と部位別の死亡率の増加割合では最も高かった。また、年齢別死亡率の推移を見ると特に最近は高齢者の死亡率の増加割合が高く、今後の高齢者社会への移行を考えると、その重要性がますます高まっていくであるう。 一方、都道府県別の年齢調整死亡率の分布を観察すると、四国地方から近畿、北陸にかけての地域に死亡率の低い県が有意に集積していることがわかった。例えば、最近5年間の平均では、死亡率の低い順に福井、和歌山、富山、香川、沖縄、大分、山口、三重、岡山、徳島、岐阜、石川、滋賀、奈良、大阪、新潟、高知、愛媛となり、関東や東北、南九州等の県は全く入っていない。またこれらの県は、最近10年間の年齢調整死亡率の推移を調べても一貫して死亡率が低い点で似ている。これらの地域が共通に持つ特徴を見出せれば前立腺癌の死亡に対して何らかの予防が出来る可能性があるだろう。例えば、沖縄、四国、南近畿等は火山国日本の中で数少ない火山帯が通ってない地域であり、この点を中心にして今後も継続して調査していきたい。なお、このグループの中でも、沖縄と四国の各県では最近の死亡率上昇傾向がグループ内の他県に比べて大きいので、その違いを調べることが全体の特徴を浮き立たせることになるかもしれない。また、予防学的な観点から言えば、最近死亡率の上昇が少なくなってきている県(大分や群馬など)に関しても、その原因の調査が必要である。 既に群馬・栃木・福島などの県の調査では、温泉及び温泉から流れ出る川の流域の市町村で死亡率が高いことがわかっているが、全国でも死亡率の高い青森、鹿児島、岩手、長野、長崎(死亡率の高い順)などでは、どのような分布になっているかを比較検討する必要がある。
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