1998 Fiscal Year Annual Research Report
就業後30年以上を経た石綿曝露作業従業員の胸部エックス線所見と曝露状況との関連
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09770283
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉積 宏治 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助手 (50291844)
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Keywords | 石綿 / じん肺 / 胸部レントゲン写真 / IS&C / デジタル化 / 電子化保存 |
Research Abstract |
比較的高濃度の石綿に曝露を受けたと考えられる作業者に対象に、胸部エックス線所見の経年的変化とそれを修飾する因子について検討を試みた。対象は石綿含有製造工場で石綿の取り扱いに携わっている作業者のうち、昭和50年前後に作業に従事している男性作業者80名。各対象者の胸部レントゲン写真(作業開始時と最近のもの)、既往歴・喫煙等についての自記式質問票を用いて調査を行った。なお、胸部レントゲン写真は、IS&C共通規格に基づき光磁気ディスクに電子化保存し、ILOの国際じん肺分類に準じて読影をおこなった。対象者の平均年齢は52.6歳(SD4.8)であり、作業開始年齢は30.9歳で、曝露開始からの平均年数は21.7年(SD1.46年)であった。作業開始時点ではじん肺分類0/0:77人、0/1:3人であったが、曝露後には0/0:63人、0/1:4人、1/0:6人、1/1:6人、1/2:1人で、前後の所見において有意な進行を認めている(Wi1coxonの符号付順位検定p=0.004)。現在および作業開始時の年齢、潜伏期間と所見の進行との間には相関性は認められなかった。喫煙に関しては、喫煙経験者は64人(80%)と一般集団における喫煙率よりも高く、喫煙強度としてBrinkman Indexを見た場合平均581(SD190.0)大きいことがわかる。また喫煙者における喫煙強度と所見の進行には有意な相関性が認められ(Spearmanの順位相関係数p=0.032)、石綿肺の進行に喫煙が何らかの修飾を加えたことが考えられた。胸部レントゲン写真の質は経年的変化により有意に劣化していることがわかり(作業開始時、最近のそれぞれの平均film qualityは2.38、1.28,Mann-Whitney)のU検定(0.001)、胸部レントゲンフィルムの電子化保存は、今後のこのような疫学調査に有用であると考えられた。
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[Publications] 吉積 宏治 ほか: "画像電子化技術を用いた工業用繊維曝露集団のエックス線写真の経時的変化の検出" INNER VISION. 13,9. 29 (1998)
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[Publications] 吉積 宏治 ほか: "電子化保存技術を用いた胸部レントゲン写真じん肺所見の実用." 医療情報学会 論文集. 200-201 (1998)