1998 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫性炎症モデルにおけるMAdCAM-1分子の役割と治療への応用の検討
Project/Area Number |
09770313
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小池 竜司 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (50250220)
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Keywords | MAdCAM-1 / モノクローナル抗体 / 腸管付属リンパ組織 / 腸管粘膜固有層 / アジュバント関節炎 |
Research Abstract |
われわれが樹立した抗ラットMAdCAM-1抗体を用いて、ラット全身諸臓器における蛋白レベルでのMAdCAM-1分子の発現を免疫組織染色法により検討した。その結果既に知られているマウスと同様に、腸管付属リンパ組織および腸管粘膜固有層の高内皮細静脈(HEV)において特異的で強いMAdCAM-1発現が確認された。またマウスでは脾臓辺縁帯での発現が報告されているが、ラットでの検討では脾臓にMAdCAM-1の発現はなく、われわれが以前mRNAレベルで得た知見と一致すると同時に、動物種によってMAdCAM-1の発現分布や関連した構造に若干の相違が存在することが明らかとなった。さらに胎児期から新生児期のラットにおいて全身諸臓器でのMAdCAM-1の発現とその変化を同法により追跡したところ、胸腺と皮膚のHEVで出生前後に一過性に発現誘導されること、腸管粘膜固有層では胎児期に広範に強い発現が見られるが出生後減少していくことが観察され、同時期のリンパ球の移動や臓器の形成発達についてもMAdCAM-1分子が重要な役割を果たしていることが示唆された。 次に自己免疫疾患モデルとしてアジュバント関節炎誘発ラットに抗ラットMAdCAM-1抗体を投与し、その影響を観察したところ抗体投与群では対照に比べて関節炎発病が早まり悪化する傾向が認められた。この結果からMAdCAM-1分子を介する経路は関節炎成立に対し抑制的に作用している可能性が示唆された。これはこれまでの他の動物や疾患モデルでの報告とは逆の事実を意味するものであるが、MAdCAM-1分子そのものの発現分布や調節を考慮すると必ずしも矛盾するものではなく、今後さらに詳細な検討を行い検証していく必要があると考えられた。
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[Publications] Iizuka T,Koike R,et al.: "Cloning and characterization of the rat MAdCAM-1 cDNA and gene" Biochimica et Biophysica Acta. 1395. 266-270 (1998)
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[Publications] 小池竜司: "腸管周囲リンパ組織の形成にβ7インテグリンが必要である." 臨床免疫. 30(2). 252-258 (1998)
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[Publications] 小池竜司: "ホーミング現象(リンパ球)" Surgery,Frontier. 5(1). 71-74 (1998)
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[Publications] 飯塚利彦,小池竜司: "シアロムチンファミリー" 臨床免疫. 30(Supl 18). 67-76 (1998)
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[Publications] 飯塚利彦,小池竜司: "インテグリンガンドとしての免疫グロブリンスーパーファミリー" 医学のあゆみ. 187(1). 17-23 (1998)