1998 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウィルス蛋白とインターフェロンシグナル伝達系の相互作用の解析
Project/Area Number |
09770347
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒崎 雅之 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (10280976)
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Keywords | C型肝炎ウィルス / インターフェロン / シグナル伝達 / NSSA |
Research Abstract |
我々はNS5A領域内ISDR(NS5A 2209-2248)のアミノ酸変異とinterferon(IFN)治療効果が関連することを報告してきた。最近ISDRを含むNS5AのC末端領域が転写活性化作用を有することがKatoらにより報告されたが、IFN治療抵抗性との関連は現時点では明らかではない。一方、NS5Aと同様に転写活性化作用を有するadenovirus E1A、EB virus NA等のウイルス蛋白は、細胞内IFN signal伝達系を阻害する作用を有することが知られている。今回我々は、NS5A蛋白による細胞内IFN signal伝達系への抑制効果を解析し、同効果に対するISDRアミノ酸変異の影響を検討した。C型慢性肝炎症例の血清からRT-nested PCR法によりISDRに種々の変異を有するNS5A遺伝子を増幅、CMV Enhancer /Promoterの下流に組み込みNS5A発現vectorを作成した。さらにIFN誘導遺伝子のpromoter領域に存在するIFN stimulated response element(ISRE)の下流にluciferase geneを組み込んだISRE-reporter vectorを作成し、NS5A発現vectorとともにHuh-7細胞内にcalcium phosphate法で遺伝子導入した。48時間培養後にIFN alpha 2b 100-1000IU/mlで48時間刺激し、luciferase活性を測定した。ISRE-reporter vectorをtransfectionした細胞ではIFN刺激によりluciferaseが誘導され、IFN dependentにluciferaseが発現することが確認された。NS5A発現vectorのco-transfectionにより、IFNにより誘導されるluciferase活性は8-53%抑制された。IFN independentにluciferaseを強制発現するvector、pGL3 controlをtransfectionした細胞においてはNS5Aはluciferase発現に影響せず、NS5Aによるluciferase活性の抑制はIFN signal伝達の阻害を反映していると考えられた。この抑制効果は、NS5A wild typeでは29-53%であったのに対し、ISDRに変異を有するNS5A intermediateおよびmutant typeでは8-31%であり、NS5A wild typeにおいてより強い抑制効果がみられた。HCV-NS5A蛋白は、IFNにより誘導されるreporter geneの発現を抑制し、その効果はISDRの構造と関連していることが示された。NS5A蛋白によるIFN治療抵抗性の機序として、細胞内IFN signal伝達抑制機構が存在することが示唆された。
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[Publications] Kurosaki et al.: "The nonstructural 5A protein of hepatitis C virus inhibits cellular responses to interferon in cultured cell lines." Hepatology. 28. 272 (1998)
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[Publications] 黒崎雅之: "消化器癌と遺伝子異常・治療" 国際医書出版, 191 (1998)