1997 Fiscal Year Annual Research Report
慢性肝炎の肝細胞障害におけるCD44の役割に関する研究
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09770355
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片野 義明 名古屋大学, 医学部, 助手 (50283445)
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Keywords | 慢性肝炎 / 接着分子 / CD44 |
Research Abstract |
慢性肝炎の肝細胞障害において、接着分子であるICAM-1及びVCAM-1は重要であるが、病態をより正確に把握するには、他の細胞接着分子やサイトカインの影響をも考慮に入れなければならない。CD44は、リンパ球のホ-ミングレセプター及び、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックスのレセプターとして機能する一方で、リンパ球の増殖及び活性化に関わる重要なシグナル伝達分子でもあり、局所の免疫応答に関与しているものと考えられる。本研究では、慢性肝炎の肝細胞障害機構におけるCD44の役割について検討した。 ELISA法により測定した慢性肝炎患者の血清中可溶性CD44(sCD44)濃度は、237±64ng/mlで、健常対象群(177±33 ng/ml)に比し、有意に高値であった。 ICAM-1、VCAM-1、ヒアルロン酸、及びIV型コラーゲン(IV-C)値との比較では、sCD44値は、ICAM-1(r=0.57、p<0.001)、ヒアルロン酸(r=0.49、p<0.01)と有意な相関を認めたが、VCAM-1及びIV-Cとは相関は認めなかった。また、sCD44はALTと有意な相関(r=0.41、p<0.01)を認めた。 IFN投与例で,IFN投与終了1年間血中HCVRNAが持続陰性化していた症例を著効群、それ以外を無効群とし、IFN投与前及びIFN投与終了1年後のsCD44値を測定した。IFN投与前のsCD44は、著効群:239±51 ng/ml、無効群:234±78 ng/mlで、両群間に有意差は認めなかった。IFN投与終了1年後のsCD44は、著効群:190±47 ng/ml、無効群:207±48 ng/mlで、著効群は、IFN投与前値に比し投与終了1年後値は有意に低下していた(P<0.01)。 以上のことより、CD44は、慢性肝炎の活動性に関与する重要な接着分子の1つであることが示唆された。
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