1997 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性肺疾患とヒト好中球細胞内pHを調節するNa^+/Ha^+ Exchangerの役割
Project/Area Number |
09770407
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福島 健泰 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (30218911)
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Keywords | 好中球 / アポトーシス / 炎症性肺疾患 |
Research Abstract |
肺疾患の原因構成要素に血球系細胞の関与を前提として、特に好中球の関与を考え、好中球の活性化の機序を細胞生物学的・分子生物学的に明らかにすることを、この研究課題の目的とした。具体的には(A)細胞内pHと肺疾患との関わり、(B) Program Cell Death (Apoptosis)と肺疾患との関係を調べた。 (A) :ヒト好中球の細胞内pHiは、蛍光色素BCECF-AMを用い吸光蛍光度計を用いて測定した。急性肺炎患者から採取した好中球はfMLPやPMAといった刺激に対するpHiの上昇の程度が正常者の好中球に比べ大きかった。又、この結果は共焦点レーザー蛍光顕微鏡やマルチプレート蛍光リーダーによる実験により裏付けられた。炎症を伴わない肺疾患患者(肺癌、肺気腫等)からの好中球においてはfMLP、PMA刺激によるpHiのレスポンスは正常群と比べて変化は認められなかった。これらの結果より急性肺炎-ほとんどが細菌性-患者の好中球は活性化状態にあり、おそらくはNADPH-oxidaseから発症されるH^+(プロトンイオン)を細胞外へ排出し、細胞内pHの酸性化を防ぐ機構が活発になっていると考えられた。 (B) :難治性気管支喘息患者は吸入ステロイド剤が効きにくく、副腎皮質ホルモン依存性-持続内服の状態となっている。彼らの末梢血好中球数は増加しており、常時10,000/mm^3以上であることに注目して副腎皮質ホルモンと好中球のアポトーシスの関連を調べた。まず、正常者とステロイド依存性気管支喘息患者の好中球の生存率を調べた。好中球分離後、ステロイド依存性患者の好中球は正常に比して有意に生存期間が長かった。細胞生存率はWST-1法、トリパンブルー法の二方法により調べた。又、正常者から分離した好中球に副腎皮質ホルモンであるデキサメタゾンを加えることにより、好中球の生存率をin vitroで増加させることができた。副腎皮質ホルモンによる好中球増多症は今までそのメカニズムが不明であったが、アポトーシス抑制による好中球数増加作用も原因となっている可能性が示唆された。同じ血球系でもリンパ球、単球、リンパ球に対してはアポトーシス誘導作用があり、細胞の種類の違いによる機構の差が興味深いと考えられた。
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