1998 Fiscal Year Annual Research Report
肺小細胞癌におけるproGRP遺伝子の発現調節と遺伝子治療への応用に関する研究
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09770427
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
内田 和宏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (70277002)
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Keywords | 肺小細胞癌 / 腫瘍マーカー / 遺伝子発現 / proGRP遺伝子 / alternative splicing / GRP受容体遺伝子 / autocrine growth factor |
Research Abstract |
Progastrin-releasing peptide(proGRP)はGRPの前駆体で,肺小細胞癌(SCLC)細胞で特異的に産生されるため,SCLCの腫瘍マーカーとして用いられている.近年,GRPのSCLCにおけるautocrine growth factorとしての作用が注目されているが,これはSCLC細胞から分泌されたGRPが癌細胞膜表面の主にGRP受容体(GRPR)に結合し,G蛋白を介するsignal伝達系を介して細胞増殖を促すことによるものである.1997および1998年度の今研究では,(1)SCLC患者の血清proGRP値と腫瘍内のproGRP mRNA発現との相関,(2)proGRP遺伝子発現SCLC腫瘍組織におけるmRNAのalternativesplicingの状況,(3)SCLC腫瘍組織におけるGRP蛋白産生,(4)SCLC腫瘍組織中のproGRP遺伝子およびGRPR遺伝子の発現の相関について検討した. まず,(1)SCLC7例から同意を得た上で腫瘍組織を採取し,mRNAを抽出後逆転写反応(RT)によりcDNAに変換し,proGRP mRNAに特異的なプライマーを用いてnested PCR増幅により解析した.その結果,血清proGRP値が高値を示した5例においてproGRP mRNAの発現が認められたが,上昇をみないSCLC患者2例の腫瘍内ではproGRP mRNAは検出されなかった.(2)次いで,proGRP遺伝子転写後alternative splicingによりtypeI,II,IIIの3種の成熟mRNAが生成されうるため,これら3群のmRNAの発現状況を比較検討した.その結果,腫瘍組織内でproGRP mRNAが発現している症例においてはmRNA分画の平均はtypeI 58%,typeII 0%,typeIII 42%であり,症例間で明らかな差異は認められなかった.(3)さらに,腫瘍組織内でのGRP蛋白産生の有無を抗ヒトGRP抗体を用いた免疫染色にて検討したところ,血清proGRP高値で腫瘍組織内のproGRP mRNA陽性の症例のみで,細胞内のGRP蛋白を確認しえた.(4)GRPR遺伝子mRNA発現については,7例のSCLC腫瘍をRT-nested PCR法にて検討の結果,proGRP mRNA発現の認められた5例中2例で陽性であった. 以上よりGRPのSCLC細胞に対するautocrine growth factorとしての作用と,さらにGRPR遺伝子発現に対する制御作用の可能性が示唆された.今後.SCLC腫瘍組織内における他のGRP受容体であるNMB-RおよびBRS-3のmRNA発現の有無についても解析し,GRPがこれらの受容体を介してautocrine growth factorとして関与している可能性について検討するとともに,GRP産生SCLCと非産生SCLC患者との間に腫瘍増殖能や治療に対する反応性,予後などの臨床的差異があるかについても検討する予定である.
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