1997 Fiscal Year Annual Research Report
運動異常症の発生機構に関する行動学的・免疫細胞化学的研究
Project/Area Number |
09770458
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
三輪 英人 順天堂大学, 医学部, 助手 (50231626)
|
Keywords | 運動異常症 / 大脳基底核 / パーキンソニズム |
Research Abstract |
大脳基底核障害の病態機構を明らかにするために,予定した一連の実験を遂行中である. ラットの淡蒼球外節(GPe)を神経毒であるイボテン酸の微量注入によって一側性に破壊し,モデル動物を作成し,この動物モデルに各種の薬剤を投与していかなる行動効果が得られるかを検討している.注目すべき所見が得られつつあるが,特にドパミD2ン受容体拮抗薬を全身性に投与すると,GPe破壊側の対側に向かう激しい回転行動が惹起されることを見出した.さらにこの動物の脳内のc-Fcs蛋白の発現を免疫組織学的に同定したところ,破壊側の大脳基底核出力部位(淡蒼球内節,黒質網様帯)において発現するはずのc-Fcsの出現が抑制されていた(学会に発表予定,学術雑誌に投稿中).この事は,GPeの破壊がドパミン欠乏状態における異常な神経細胞興奮を抑制していることを示す.現在の仮説では,GPeの脱抑制によって視床下核の神経細胞の興奮性が増し,このために淡蒼球内節,黒質網様帯においてc-Fcsが発現すると考えられている.したがって,得られた結果は,GPeを破壊することによって視床下核の興奮性がむしろ低下したことを示すので,現在一般化しつつある仮説より得られる推定に反すると考えられる.この実験結果は大脳基底核における病態生理機構を考えた場合,意義あるものと思われる.今後も実験をさらに継続する予定であり,今後におけるさらなる検討が期待される.
|