1997 Fiscal Year Annual Research Report
ジストロフィン結合蛋白質サルコグリカン群の機能異常による心筋症の解析
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09770528
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
花田 裕典 国立循環器病センター研究所, バイオサイエンス部, 室員 (60228509)
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Keywords | 心筋症 / 細胞骨格 / ジストロフィン / サルコグリカン / インテグリン |
Research Abstract |
最近、BIO14.6ハムスターの心筋症の原因遺伝子がジストロフィン(Dys)複合体の一つ、δ-サルコグリカン(δ-SG)遺伝子であることが報告され、SGの欠損が心筋症を引き起こす可能性は非常に高い。そこで、骨格筋由来の株組織を用いた実験系を構築し、サルコグリカン欠損に伴う細胞障害を詳細に検討した。 トリプシンで浮遊させた筋管細胞では、ディッシュへの再接着あるいはRGDSペプチドの添加でα-、γ-SGのチロシンがリン酸化された。筋管細胞から抗Dys抗体を用いて免疫沈降した標品にはDys複合体以外にインテグリン(Int)が含まれ、また、α-SGが接着斑に存在していた。一方、SGを欠損した筋管細胞では接着能が低下し、Dys複合体ととともに免疫沈降されたInt量も低下した。これらの結果からDys複合体はSGのチロシンリン酸化を介してInt細胞接着系と相互作用していることが明らかになった。 また、SGを欠失された筋管細胞に伸展刺激を加えると、欠失していない細胞に比べて、最高で80倍も高いCPKが遊離した。CPKの増加は、チロシンキナーゼ、CおよびAキナーゼ、PI3キナーゼ、MEKなどに対する阻害剤では抑制されなかったが、細胞外Caがほとんど存在しない場合、細胞内にCaキレーターを導入した場合、カチオンチャンネル阻害剤のニフェジピンやトラニラスト、カルパイン阻害剤では阻害された。SGを欠失した細胞では細胞膜に異常が存在し、Ca流入、細胞内Ca濃度の増加、カルパイン活性の上昇が起こった結果、遊離CPKが増加、すなわち細胞障害が引き起こされたと考えられる。 以上の結果は、心筋症ハムスターや筋ジストロフィー患者の心筋や骨格筋細胞では細胞内Ca濃度やcalpain活性が高いことなどの結果とよく一致し、本研究で構築した実験系が心筋症や筋ジストロフィーの病態のモデルとして適していることが示された。
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[Publications] Yoshida,T.et al: "Bidirectional signaling between sarcoglycans and the integrin adhesion system in cultutred L6 myocytes." Journal Biological Chemistry. 273(3). 1583-1590 (1998)
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[Publications] Iwata,Y.et al.: "α1-syntrophin has distinct binding sites for actin and calmodulim." FEBS Letter. 423(2). 173-177 (1998)
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[Publications] 花田裕典他4名: "心筋症ハムスター心筋におけるsarcoglycan異常の検討" 心筋の構造と代謝-1996. 19. 115-122 (1997)