1997 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆性疾患の概日リズム障害に対する時間療法の開発及びその生理学的意義に関する研究
Project/Area Number |
09770729
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
三島 和夫 秋田大学, 医学部, 講師 (40239223)
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Keywords | アルツハイマー型痴呆 / 睡眠・覚醒リズム / メラトニン / 概日リズム障害 |
Research Abstract |
アルツハイマー型老年痴呆患者の睡眠・覚醒リズム障害に対する外因性メラトニン補充療法の治療効果を検討した。対象は、同一施設に3ヶ月以上入所中で生活スケジュールを合致させたSDAT患者7名(女性、平均年齢73.6歳)である。消灯2100時〜起床0600時までを夜間時間帯とし、照度を25ルクス以下に抑えた。2週間の治療前観察期間の後に、6mgのMLTもしくはプラセボ(PCB)を4週間にわたり2100時にdouble-blind cross-over designにて投与した。MLT投与相およびPCB投与相の間には2週間以上のintervalを設けた。全研究期間にわたりアクチグラフおよび睡眠・行動表を記載した。MLTおよびPCB投与期間の最終日の1200時から2時間おきに24時間にわたり100ルクスの低照度下で採血を行い、血清中MLT濃度をradio-immuno assayにて測定した。研究の実施にあたり、被験者およびその家族に研究の主旨を説明し同意を得た。 PCB投与時に比較してMLT投与時には、夜間活動量比率(F=3.44,df=2,p<0.05)および夜間の行動障害スコア(p<0.05)の有意な低下が認められた。MLT投与は総活動量および日中活動量には有意な変化をもたらさなかった。経口投与後、血清MLTレベルは速やかに上昇し投与1時間後には最高血中濃度(平均3724.3±1046.6pg/ml)に達したが、その後速やかに消失し翌日の14時には生理的分泌レベルにまで復した。 これらの結果は、外因性MLTがSDAT患者における睡眠障害および随伴する行動障害の治療に際して有用である可能性を示唆している。特に、高齢者での睡眠障害治療の際に常に問題となる連続投与時の薬物体内蓄積や日中の過鎮静が認められなかった点は臨床上意義深い。
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[Publications] Mishima K: "Hypnotic and hypothermic action of daytime-administered melatonin." Psychopharmacology. 133. 168-171 (1997)
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[Publications] Mishima K: "Different Manifestations of Daily Rest-Activity and Body Temperature Rhythms in Patients with Senile Dementia of Alzheimer's Type and Multi-Infarct Dementia." Neurobiol. Aging. 18(1). 105-109 (1997)
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[Publications] Mishima K: "Chronotherapy for circadian rhythm disorders in elderly patients with dementia." In : Hayaishi O, Inoue S. eds, ゙Sleep and Sleep Disorders : From Molecule to Behavior″, ACADEMIC PRESS INC, Kyoto,. 177-191 (1997)
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[Publications] 三島和夫: "加齢に伴う概日リズム発現・調節機構障害とその増悪因子および治療対策." 脳と精神の医学. 8(1). 33-44 (1997)
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[Publications] 三島和夫: "光照射療法の副作用と注意点." 八木剛平 編集. 新精神科選書4 : 精神科 診療の副作用・問題点・注意点 大阪 : 診療新社. 411-424 (1997)
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[Publications] 三島和夫: "メラトニンの生体リズム調整作用." 日本臨床. 56(2). 302-307 (1998)