1997 Fiscal Year Annual Research Report
気分安定薬のスクリーニング法の開発;Fos蛋白による脳機能マッピングを用いた研究
Project/Area Number |
09770743
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
濱村 貴史 岡山大学, 医学部附属病院, 助手 (40273974)
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Keywords | Lithium / mania / Fos / AMPHETHAMINE / Mood Stabilizer / Striatum |
Research Abstract |
リチウムは、躁状態の治療に広く用いられているが、その脳内作用部位は未だ明かにされていない。ヒトでは、覚醒剤の急性投与により躁類似の症状が出現するが、これはリチウム慢性投与により抑制されることが知られており、躁病モデルと考えられている。今回はリチウムの抗躁効果の脳内発現部位を解明する目的に、メタンフェタミン急性投与により賦活される神経活動が、リチウム慢性投与により抑制される脳部位を、Fos蛋白を指標にした脳機能マッピング法を用いて検討した。このFos蛋白は転写制御因子の一つで、各種の神経伝達物質やホルモンにより、活性化された神経細胞の核内に一過性に出現する。このため、薬物投与後のFos蛋白陽性神経細胞の分布を検討することにより、その薬物により活性化された脳部位を同定することが可能となる。 ラットに、リチウムを14日間投与後、各群にメタンフェタミン(2mg/kg)又は、生食を投与した。その結果、リチウムの血中濃度は0.38±0.02mEq/Lであり、臨床有効血中濃度に近い値であった。検討した21部位中19部位で、メタンフェタミンを投与によりFos蛋白陽性細胞が発現した。これらの19部位のうち、リチウムの慢性投与により、前頭前野・線条体・側坐核・扁桃核中心核で部位特異的に抑制された。脳機能解剖的に、線条体(特に内側部)・側坐核は、辺縁系から運動系への出力核として、情動や報酬行動の発現に深く関わっていることが知られ、扁桃核中心核は、扁桃核複合体の出力核として、視床下部を介して情動行動や自律神経やホルモン分泌を調整する役割を果たしている。リチウムがこのよな情動を司る辺縁系の出力核において、メタンフェタミンによる神経興奮を抑制したことは、その抗躁作用と関連して興味深い知見である。
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