1997 Fiscal Year Annual Research Report
血管性痴呆とアルツハイマー病の発症に関与する遺伝的素因と環境因子の解析
Project/Area Number |
09770746
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
武田 良平 愛媛大学, 医学部, 助手 (60271087)
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Keywords | 血管性痴呆 / 孤発性アルツハイマー病 / 遺伝子多型 / ライフスタイル / 発症危険因子 |
Research Abstract |
血管性痴呆(Vascular Dementia;VD)と孤発性アルツハイマー病(Alzheimer's Disease;AD)の発症に関連する遺伝因子と環境因子の分析を行う目的で、Apolipoprotein E(Apo E)、Apo B、Angiotensin-converting enzyme(ACE)やAngiotensinogen(AGT)の遺伝子多型分析と食事、嗜好品、社会的活動性や余暇等のライフスタイルに関するアンケート調査を行った。対象者211名中VD患者は73症例、孤発性AD患者68症例と対照群70名であり、研究調査開始に際し、家族や同伴者に対し十分な説明と同意を得た者のみを対象とした。 Apo E遺伝子の多型分析では、対照群の約80%は3/3型で、3/4型はわずか10%、4/4型は存在しなかった。一方、ADでは3/3型と3/4型がそれぞれ約45%であり、VDでも55%と30%であった。ε4のアリル頻度は、対照群に比べADは5.3倍、VDで3.7倍と有意に高く、両疾患の明らかな発症危険因子と考えられる。Apo Bは、エキソン26のC-_>T置換がVDで対照群の10倍と有意に高く、VD発症の危険因子となる可能性が示唆された。Apo Bの他の2ヵ所は、三群で差はなかった。なお、ACEとAGTに関しては三群間で有意の差を認めなかった。 ライフスタイルに関する因子分析では、食習慣、味付けや嗜好品に関しては、対照群に比較して孤発性ADとVD両疾患で、香辛料や熱いものが嫌いである傾向があった。社会的活動性は、ADで全項目に低い傾向が認められた。一方、VDでは社交性、世話好きや来客回数は対照群と差が認められなかった。また、両疾患とも有意に趣味が乏しく教育歴も短かった。 以上の結果から、本研究は両疾患の発症危険因子の同定のみならず、予防法の開発にも貢献する可能性がある。
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[Publications] 武田 良平: "アルツハイマー病と血管性痴呆の発症に関連する遺伝子および環境因子の解析 〜遺伝子多型とライフスタイルの分析〜" 愛媛医学. 16(3). 31-38 (1997)
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[Publications] R.Takeda, M.Mizobuchi, et al.: "Apolipoprotein E and B,angiotensin-converting enzyme and angiotensinogen polymorphism in patients with vascular dementia or sporadic Alzheimer disease." Neurochemical Research. (in press).