1997 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病患者における精神症状および薬原性錘体外路症状発症と関連する遺伝子の検索
Project/Area Number |
09770770
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
稲田 俊也 国立精神・神経センター, 精神保健研究所・老人精神保健部, 室長 (00184721)
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Keywords | 精神分裂病 / 遺伝子 / ドパミントランスポーター / ハロペリドール / 錘体外路症状 / 遅発性ジスキネジア / 抗精神病薬 |
Research Abstract |
精神分裂病とドパミン神経系に関連した蛋白をコードする遺伝子変異型との関連研究が近年精力的に行われているが,本年度はドパミントランスポーター(DAT)遺伝子座位上のexon9に存在するDdeI多型が精神分裂病患者にみられる精神症状や抗精神病薬の治療反応性にどのような影響を及ぼしているかについての検討を行った。対象は本研究の目的及び意義についての十分な説明を行い,書面での同意の得られた精神分裂病患者217名と,これまでに抗精神病薬服用歴のない健常対照者137名である。これらの対象者から採取した血液からDNAを抽出し,PCR法により多型部分を増幅し,制限酵素DdeIで処理し多型を判別した。精神医学的変数としては精神分裂病患者全体及びその部分群として個別の初発精神症状(幻覚妄想,奇異な行動,思考障害,陰性症状)がみられた各群,若年発症群,遺伝負因濃厚群などに分け,これらの各群とDdeI多型との関連について検討した。その結果,対象者に変異型アリールをホモでもつ者はみられず,その出現頻度は精神分裂病群(6.9%)と健常対照群(8.8%)の間に有意差はなかった。また特定の精神症状を呈する患者の各部分群と健常対照者群との比較や,急性錘体外路症状及び遅発性ジスキネジア発症の脆弱性の有無により分けた群間比較でも,DdeI変異型の出現頻度に有意差はなかった。一方,定用量のハロペリドールを3カ月以上服用していた患者148名について,DdeI変異型の有無でその平均服用量及び平均血中濃度の群間比較を行ったが,いずれも有意差はなかった。さらに,抗精神病薬の処方が1年以上変更のない患者56名についてもDdeI変異型の有無により抗精神病薬1日投与量の比較を行ったが,両群間に有意差はなかった。以上のように今回の調査結果からはDAT遺伝子DdeI多型の意義を見いだすことはできなかったが,今後もさまざまな角度から検討の余地は残されているものと考えられた。
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