1998 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病患者における精神症状および薬原性錐体外路症状発症と関連する遺伝子の検索
Project/Area Number |
09770770
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
稲田 俊也 国立精神・神経センター, 精神保健研究所・老人精神保健部老化研究室, 室長 (00184721)
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Keywords | 精神分裂病 / 抗精神病薬 / 錐体外路症状 / 遅発性ジスキネジア / CYP2D6 / 遺伝子多型 / ハロペリドール |
Research Abstract |
精神分裂病患者にみられる多彩な精神症状および抗精神病薬による錐体外路症状に関連する遺伝子多型の探索を,前年度までは主として中枢ドパミン神経系に関連する遺伝子座位に焦点を当ててすすめてきたが,本年度は抗精神病薬の主要代謝酵素であるチトクロームP450IID6の酵素活性低下をきたすことが知られている変異型のなかでも日本人に比較的出現頻度の高いCYP2D6^*10についての検討を行った。対象は書面により同意の得られた抗精神病薬を服用中の精神分裂病患者214名と健常対照者196名であり,これらの対象者から採取した血液からDNAを抽出し,CYP2D6^*10多型の判別を行った。このうち分裂病患者からは可能な限り薬原性錐体外路症状の発現状況についてカルテ調査やAIMSとDIEPSSを用いた評価を行い,また3カ月以上定用量でハロペリドールの維持療法が行われており,他にブチロフェノン系抗精神病薬を服用していなかった患者190名についてはその定常状態の血中濃度についても調べ,CYP2D6^*10多型との関連について検討した。その結果,CYP2D6^*10変異型のアリール出現頻度は精神分裂病群および健常対照群ともに41%であり,また精神分裂病群のうち遅発性ジスキネジア(TD)脆弱群(N=27)では39%,TD非脆弱群(N=106)では40%と,いずれの群間にも有意差はみられなかったが,抗精神病薬投与初期における急性錐体外路症状(EPS)発現の脆弱性についてはEPS脆弱群(N=32)が44%,EPS非脆弱群(N=32)が30%と傾向差がみられた(p<0.1)。EPS脆弱群がEPS非脆弱群に対して,CYP2D6変異型を持つ相対危険度(95%信頼区間)は,今回調べたCYP2D6^*10が1.84(0.89-3.82)であり,これは過去にわれわれのグループが報告したCYP2D6^*2の結果よりも低い値であった。
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