ミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病及び脳筋症(MELAS)の解明と臨床応用

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09770772
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 藪中 宗之 北海道大学, 医学部, 助手 (70240637)
• Keywords: ミトコンドリア / 糖尿病 / MELAS / 遺伝子異常 / EBV

Research Abstract

今年度は、本研究の主要三項目、(I)ミトコンドリア遺伝子異常症(3243変異)の病態解析、(II)ミトコンドリア遺伝子変異発生・修復機構、(III)ミトコンドリア遺伝子変異の治療法開発のうち、(I)を中心に検討を行った。A3243G変異による糖尿病患者ならびにミトコンドリア脳筋症(MELAS)患者よりリンパ球を採取し、EBウイルスによるトランスフォームを試みた結果、正常のリンパ球と同様の方法で不死化に成功した。A3243G変異検出法の簡便化を目的に、変異検出用プライマーを作製しアニーリング温度を種々検討したが、僞陽性が多く実用化に至らなかった。次に、脳筋症症状の全くないミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病患者の大腿四頭筋を採取し、病理組織所見、遺伝子異常の有無・程度を検討した。筋症状は全くないにも拘わらずMELASに特徴的な病理組織所見が見られ、遺伝子変異(A3243G変異)率は白血球より高率であった。同患者ではブドウ糖の腎排泄閾値低下、感温性難聴が合併しており、いずれの機能もATP産生能に関連していることから、ミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病患者においてATP産生能に関連した細胞機能の低下が潜在していることが示唆された。本年度の研究成果を踏まえ、来年度は上記(II)、(III)の検討に移る予定である。

Research Products

• [Publications] Yabunaka,N.: "Involvement of Ras in the expression of glycoipid sultotransterase in human renal cancer cells." Int.J.Cancer. 72. 620-623 (1997)
• [Publications] 長井 伸二: "増殖糖尿病網膜症を合併したミトコンドリア病(進行性外眼筋麻痺)の1例" 日本眼科紀要. 48. 165-168 (1997)