1998 Fiscal Year Annual Research Report
副腎皮質におけるアンジオテンシンII2型(AT2)受容体の病態生理学的役割
Project/Area Number |
09770801
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
田辺 晶代 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (00236655)
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Keywords | アンジオテンシンII2型受容体 / 副腎皮質 / アンジオテンシンII1型受容体 / アルドステロン / コルチコステロン |
Research Abstract |
アンジオテンシンIIの受容体サブタイプにはタイブ1a(AT1a)、タイプ1b(AT1b)、タイプ2(AT2)の少なくとも3種が存在し、AT1受容体はアンジオテンシンIIの血圧、水・電解質代謝に対する作用発現に主要な役割を担う事が明らかである。しかし各受容体サブタイプの副腎ステロイド分秘における役割の相違に関しては詳細不明である。そこで本研究ではATla受容体欠損(ATlaKO)マウスにAT1あるいはAT2受容体の拮抗薬、作動薬を組み合わせて投与し、副腎皮質のステロイド分秘に対して各サブタイプが示す機能を選択的に検討した。 副腎におけるAT1a.AT1b受容体、AT2受容体の機能をより選択的に解析するため、10週齢の雄性ATIaKOマウスに外因性にアンジオテンシンIIおよびAT2受容体作動薬を単独あるいはATl受容体拮抗薬の存在下で投与し、血中副腎ステロイドホルモン濃度(コルチコステロン、アルドステロン)を投与前後で測定した。また、in situ hybridization法を用いてAT1a、AT1b受容体の副腎皮質組織における局在を検討した。in situhibridization法の結果、AT1a受容体は副腎皮質球状層、束状層に、AT1b受容体は球状層のみに分布していた。AT1aKOマウスの血中アルドステロンおよびコルチコステロン濃度は野生型マウスに比べ有意に低値であった。アンジオテンシンII投与により野生型マウス、AT1aKOマウスいずれにおいても血中アルドステロン濃度は約2倍に増加し、AT1受容体拮抗薬を1週間投与して前処置したAT1aKOマウスにおいても血中アルドステロン濃度は有意に増加した。一方、AT2受容体作動薬はいずれのマウスにおいても血中アルドステロン濃度に影響しなかった。アンジオテンシンII投与により野生型マウスにおいて血中コルチコステロン濃度は増加したが、AT1aKOマウスでは変化がなかった。以上の結果から、アンジオテンシンII投与によるアルドステロン分泌は球状層におけるAT1a、AT1b受容体を介すると共に、AT1a、AT1b、AT2受容体以外の受容体を介する事が示唆された。一方、コルチコステロン分泌はAT1aを介し、AT1bは関与しないと考えられた。これらの結果からアンジオテンシンIIの受容体サブタイプはアンジオテンシンIIの生物活性発現において重要な意義を有することが示唆された。
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