1997 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄球系細胞の分化におけるレチノイン酸(RA)の機能解析
Project/Area Number |
09770811
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須永 真司 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (70282621)
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Keywords | レチノイン酸 / レチノイン酸受容体 / 骨髄球系細胞 / 細胞分化 / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
MRP8カセット(ヒトMRP8遺伝子のプロモーター、イントロン、ポリA領域を含むプラスミドベクター)に、ドミナアントネガティブ型レチノイン酸受容体(RAR)を挿入したトランスジーンを作製した。このDNAをマウス受精卵前核に注入し、27系統のトランスジェニク(Tg)マウスを得た。Tgマウスの骨髄細胞を回収し、抗Gr-1抗体を用いたフローサイトメトリー解析とサイトスピン標本による形態学的観察をおこなった(Gr-1抗原は骨髄球系細胞の分化にともない発現量が増す。すなわちGr-1^<high>分画が成熟好中球を、Gr-1^<low>分画が幼若な骨髄球系細胞を示す)。その結果、多くの系統でGr-1^<high>分画の細胞が著減し、その分Gr-1^<low>分画の細胞が増加することがわかった。サイトスピン標本を鏡検したところ、Tgマウスでは幼若な骨髄球系細胞が増加していた。Tgマウスに対しレチノイン酸を経口投与し、同様の解析を行ったが、Gr-1^<high>分画の細胞が著減、Gr-1^<low>分画の細胞が増加というパターンは変わらなかった。 さらに、Tgマウスの骨髄より単核球を分離し、IL-3、GM-CSFなどの存在下に半固形培地で培養し、コロニー形成能を調べた。その結果、Tgマウスとコントロールマウスの間で、顆粒球コロニーや顆粒球-マクロファージコロニー形成能に明らかな差は認められなかった。 以上の結果から、次のことが示唆された。 1.Tgマウスにおいて、骨髄球系細胞のRARの機能が抑制された結果、分化の障害が生じた。 2.レチノイン酸のin vivo投与によりこの障害が解除されることが期待されたが、そのような結果は得られなかった。レチノイン酸の投与量が不足していた可能性がある。 3.このTgマウスでは、骨髄球系前駆細胞に異常は見られない。
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