1997 Fiscal Year Annual Research Report
初期糖尿病性腎症の病因の解析一酸化窒素との関連について
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09770839
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
八木橋 法登 弘前大学, 医学部, 助手 (10250622)
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Keywords | 糖尿病性腎症 / 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットはSTZ投与2週後では腎腫大,腎での一酸化窒素(NO)産生の増加,それに伴う腎糸球体濾過値の増加が報告されている。STZ投与2週後の対照群,未処置STZ糖尿病群,NO産生阻害剤であるnitro-arginine methyl eater(L-NAME),アミノグアニジン(AG)投与糖尿病2群間で腎におけるNOSの発現を検討した。STZ投与2週後に摘出された腎は正常対照群に比べて有意に増加していたが,L-NAME,AG投与による影響は受けなかった。傍糸球体装置の神経型,内皮型,誘導型NO合成酵素(NOS)の発現を免疫組織学的,組織化学的に調べた。その結果,緻密斑に発現する神経型NOSはNADPH diaphorase活性で代用したが,糖尿病群で対照群に比べ有意に活性が減弱していた。このことは初期糖尿病で緻密斑における神経型NOSの発現の低下を示唆する。糖尿病群へのL-NAME,AG投与により神経型NOS発現の低下は阻止された。輸出入細動脈と糸球体係蹄における内皮型NOSの発現は免疫組織学的には4群間で明らかな差異を認めなかった。誘導型NOSはすべての群の傍糸球体装置,糸球体での発現はみられなかったが,糖尿病群に対照群で認められなかったouter medullaおよび少数のinner medullaの集合管での発現がみられ,L-NAME,AG投与によりさらに発現が増強していた。傍髄質領域の糸球体表面積は糖尿病群で有意に増加していたが,L-NAME,AG投与による有意な変化はみられなかった。 以上の結果より,糖尿病状態における緻密斑の神経型NOSの低下は高血糖自体による直接影響ではなく,tubulo-glomerular feedback機構によることが示唆された。初期糖尿病ラットにおける腎のNO産生増加は,集合管における誘導型NOSの発現亢進が原因の一つとして考えられた。今回の研究により、初期糖尿病の腎におけるNOの病態生理の一部が明らかになった。
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