1997 Fiscal Year Annual Research Report
トロンビン機能的レセプターとそのリガンド・ペプチドの神経分化制御に関する研究
Project/Area Number |
09770864
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
常石 秀市 神戸大学, 医学部・附属病院, 助手 (10271040)
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Keywords | 神経分化 / トロンビン / トロンビン機能的レセプター |
Research Abstract |
平成9年度は、Thrombinの作用点であるThrombin機能的レセプター(TFR)の活性化に人工ペプチド(Thrombin Receptor Activating Peptide,TRAP)を使用し、TFRの単独活性化がもつ生物学的意義を神経系細胞において解析した。 1.神経芽細胞腫GOTOは、血清除去にて数時間で突起を伸長し、Neurofilament(NF)mRNAを発現した。TRAP添加にて突起伸長は阻害されたが、NFmRNA発現増加に影響はなかった。TFRmRNAの発現量は血清除去刺激による突起伸長に比例して2〜3時間ですみやかに増加した後、24時間後には初期値にまで回復した。TRAP刺激では有意な変化は認められなかった。血清除去刺激は神経系細胞の形態的分化を誘導するが、TFRの活性化は突起伸長を阻害し、脱分化の方向へ作用すると考えられる。血清除去によるproteasesの減少により、TFRmRNAの発現は増加し、逆にagonistであるTRAP刺激では、その増加は認められなかった。 2.神経膠腫EP1において、Urokinase mRNAはThrombin刺激後すみやかに発現量が増加した。TRAP刺激では有意な変化は認められなかった。神経膠芽腫A172において、Plasminogen ActivatorInhibitor-1(PAI-1)mRNAは、血清除去、Thrombin刺激後すみやかに増加し、24時間後には初期値まで低下したが、TRAP刺激では有意な変化は認められなかった。グリア系細胞に対して、ThrombinはTRAPとは一部異なる生物活性を有していることが明かとなった。 TRAP投与による受容体の活性化は、発達期の脳細胞を一時的に脱分化させることによって、脳損傷から防御する可能性があり、今後動物脳内への投与実験を展開していく予定である。
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