1998 Fiscal Year Annual Research Report
トロンビン機能的レセプターとそのリガンド・ペプチドの神経分化制御に関する研究
Project/Area Number |
09770864
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
常石 秀市 神戸大学, 医学部・附属病院, 助手 (10271040)
|
Keywords | 神経分化 / トロンビン / トロンビン機能的レセプター |
Research Abstract |
平成9年度は、トロンビン受容体の活性化に人工ペプチド(Thrombin Receptor ActivatingPeptide、TRAP)を使用し、TRAPがトロンビン同様に、神経系細胞を分化休止状態に留めて障害から防御する可能性を示した。ラットグリオーマC6細胞を血清除去刺激すると、96時間後に生存率が53%にまで低下するが、TRAP(1μM)添加にて76%に生存率が゙改善された。 平成10年度は、TRAP刺激が、1)C6細胞が本来有するグリア分化能に及ぼす影響、2)C6細胞が本来有する熱ストレス蛋白による自己防衛機構に及ぼす影響について、ノザンブロット法にて検討した。 1) C6細胞では、レチノイジ酸刺激(10μg/ml)でオリゴデンドロサイト由来のプロテオリピッド蛋白(PLP)mRNAが著増し、dbcAMP(1mM)刺激では細胞形態がより分化型となり、アストロサイト由来のグリア線維性酸性蛋白(GFAP)mRNAが著増した。TRAP刺激はdbcAMPによる形態変化を阻害したが、24時間後のGFAPおよびPLP mRNAの発現レベルにはほとんど影響しなかった。 2) C6細胞では、42度30分熱刺激後、60分以内にヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1).熱ストレス蛋白70(HSP70)のmRNAレベルが著増し、12時間後には刺激前値にまで低下した。TRAPを添加して熱刺激しても、これら熱ショック蛋白のmRNAレベルの増加に影響はなく、その減衰率にも変化は見られなかった。 トロンビン受容体の活性化は、C6グリオーマ細胞自身が有するストレス防御機構に影響せず、また本来のグリア分化機構にも影響を及ぼさずに、一時的に細胞をストレスから防御し得ると考えられた。
|