1998 Fiscal Year Annual Research Report
乳癌の微小転移予測とその治療に関する研究-血管新生からのアプローチ-
Project/Area Number |
09770883
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
武井 寛幸 群馬大学, 医学部, 助手 (40261846)
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Keywords | 血管新生阻害剤 / TNP-470 / 転移 / 乳癌 / 生存期間 |
Research Abstract |
【目的】乳癌において血管新生阻害剤が, 1. 転移を抑制するか否か. 2. 生存期間を延長させるか否かを検討する. 【方法】ヌードマウスの両側mammary fat padsおよび腹腔内にエストロゲンレセプター陰性ヒト乳癌細胞MDA-MB-231(2×10^6個)を注入し(day0),day1およびday7-10から血管新生阻害剤TNP-470の投与を開始した(40mg,60mg/kg週2回皮下注)投与開始後,経時的な腫瘍径および体重の測定,生存率の算出,死亡例の腹腔内転移状況の観察を行い,また,摘出した腫瘍の新生血管を染色同定し,TNP-470非投与群と比較検討した. 【結果】血管新生阻害剤TNP-470は, 1. 局所における乳癌の増殖を血管新生を阻害することで有意に抑制した. 2. 腹腔内転移を抑制せず,生存期間を延長させなかった. 3. 副作用として軽度の体重増加抑制を示した. 【考察】血管新生阻害剤は固形癌の新しい治療薬として脚光を浴びており,海外では数種の治療薬で臨床試験が行われている. その中の一つTNP-470は血管内皮細胞の増殖を特異的に阻害する抗生物質で,臨床試験で著効を示した報告もある.今回の我々の実験結果では,TNP-470は乳癌の腹腔内転移を抑制せず,生存期間も延長させなかった.よって乳癌の腹腔内転移には血管新生があまり関与しておらず,腹腔内転移を有する患者へのTNP-470の有効性は乏しいと結論せざるを得ない.しかし,TNP-470は血管新生を明らかに阻害し,局所での乳癌細胞の増殖を用量依存性に抑制した.さらに,副作用も体重増加抑制のみという軽微なものであり,今後も臨床面での有用性が期待できると考えられた.
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