1997 Fiscal Year Annual Research Report
異種組織適合抗原に対する細胞性免疫の解析と免疫寛容誘導の検討
Project/Area Number |
09770887
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 裕一 東京大学, 医科学研究所, 教務職員 (00262080)
|
Keywords | 異種移植 / HLAクラスI / ペプチド / 細胞障害性T細胞 / トランスジェニックマウス / 心移植 |
Research Abstract |
HLAクラスI抗原ペプチドの胸腺内注入による特異的な寛容の誘導について、HLAクラスI分子であるHLA-B51遺伝子、及びHLA-B35遺伝子を移入した2種類のトランスジェニックマウス(それぞれHLA-BTGM及びHLA-B35TGMと省略する)を用いて検討した。 HLA-B51TGMに移植されたHLA-B35TGMの皮膚は、平均11.4日で拒絶された。HLA-B35TGMの心をHLA-B51TGMに移植すると平均22.8日で拒絶された。病理組織学的には、移植した心の心筋間に著明なリンパ球の浸潤を認めた。HLA-B51TGMの脾より取り出したリンパ球を、HLA-B35TGMのリンパ球で刺激し、5日後にHLA-B35TGMのリンパ芽球を標的細胞として細胞障害性試験を行ったところ、細胞障害性細胞の存在が確認された。HLA-B35TGMの皮膚移植によりin vivoでプライミングされたHLA-B51TGMの脾細胞を反応細胞として用いることにより、細胞障害性は増強された。HLA-B35由来の合成ペプチドCDLGPDGRLLRGHDQSAYDGKDYIA(B35.101-125)を10μg胸腺内に注入し、2日後にHLA-B35TGMの心をHLA-B51TGMに移植したところ、平均生着期間は51日以上と著明に延長した。これらの結果より、以下のことが示唆された。 (1)HLA-B51TGMは、HLA-B35TGMの皮膚、および心を細胞性免疫反応を主体として拒絶することが示され、これらのトランスジェニックマウスが、拒絶反応におけるHLAクラスI分子の役割についての解析に有用である。 (2)ドナー抗原となるHLA-B35分子由来の合成ペプチドの胸腺内投与により、HLA-B35TGMからHLA-B51TGMへの心移植の生着延長に効果があることが示された。この方法の応用により寛容の誘導が期待される。
|