1997 Fiscal Year Annual Research Report
ラット肝硬変に対するエストロゲンの肝発癌性及び肝繊維化抑制の研究
Project/Area Number |
09770935
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山際 健太郎 三重大学, 医学部・附属病院, 講師 (30263023)
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Keywords | ラット肝硬変 / 肝発癌 / 肝線維化 / 性ホルモン |
Research Abstract |
〔対象と方法〕1)実験動物群:4週齢Wistar系雄性ラットを3群に分類。1群:0.04%TAA溶液を8カ月間飲料水として摂取させ、投与後4、8、10、12カ月後にラットを犠牲剖検、肝臓を摘出し、1gの肝を-80°Cで保存し残りをホルマリン固定した。2群:1群と同様にTAAを投与し、同時にオリーブオイル0.5mlに溶解したethynyl estradiol(EE)0.075mgを経ロ的に12カ月間投与し、以下1群と同様。3群:EEのみを2群と同様に投与。2)検索項目:(1)肝の病理組織学的検索:肝硬変、肝細胞癌の発生及び肝繊維化(score:1+〜5+)を検索した。(2)肝DNA adductの検索:凍結保存した肝よりDNAを抽出しDNA損傷であるDNA adductを^<32>P-post labeling法にて解析した。 〔成績〕(1)肝の病理組織学的検索:1群では4カ月目以降、全例乙〜甲′型肝硬変を呈し、4+〜5+の線維化や偽胆管の増生がみられ、過形成結節や肝細胞癌の発生は認められなかった。2群では4カ月目で33%に乙^1型肝硬変を認め、12カ月目まで33〜40%に乙′〜乙型肝硬変と3+〜4+の繊維化を認めたが、他の60〜67%の肝には肝硬変はなく、繊維化も1+〜2+であった。一方2群で肝硬変を認めたものでは再生結節内に過形成結節の出現を認め、月数と共にその数は増加したが、癌発生はなかつた。3群では肝硬変及び肝繊維化や過形成結節はみられず、肝類洞腔の拡張が認められた。(2)肝DNA adductの検索:1群では非癌部硬変肝と癌部のいずれにもDNA adductは検出されなかった。2群と3群ではEEによるDNA adductが4カ月目より認められ、3群ではそのレベルが4カ月目をピークに減少したのに対し、2群では12カ月目まで徐々に増加した。 〔結語〕EEは血中TGFβ1を減少させ、TAAによる肝繊維化及び肝硬変への進展を抑制した。TAAとEEの同時投与によりEEのDNA損傷を持続させヒト肝発癌に類似した肝硬変を発生母地とする過形成結節を発生させた。すなわち慢性肝障害から肝硬変・肝細胞癌への過程でエストロゲンは正負両方の作用の有ることが示唆され、ヒト肝硬変でみられるエストロゲン代謝異常や性ホルモン不均衡は肝細胞癌の発生に何らかの環境因子として関与していると考えられた。
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