1997 Fiscal Year Annual Research Report
内胸動脈グラフトのリモデリングとずり応力の関係に関する研究
Project/Area Number |
09770998
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
亀田 陽一 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (50275327)
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Keywords | 冠状動脈バイパス術 / 内胸動脈 / グラフト血流速度 / ずり応力 / グラフト血流量 / グラフト径 |
Research Abstract |
術後早期と1年でグラフト近位部と遠位部においてどの様にグラフトがリモデリングし、血液供給能を増加させるのかをずり応力の観点から検討した。【対象】川崎病にて冠状動脈バイパス術を行った6例(年齢15±3歳、全例男)を検討した。左内胸動脈を左前下降枝に吻合し、術後1年の確認造影で良好に開存しているものを対象とした。【方法】術後28±6日(早期)と407±56日(1年)に心カテを行い、flow wireでグラフト近位部と遠位部の血流速度を測定し、造影で血流速測定部位の冠状動脈径(d)を求めた。グラフト流量(GF)は平均最大血流速度(APV)より求めた。また、ITA遠位部に対する近位部のずり応力の比(SSR)をHagen-Poiseuilleの式からSSR=pAPV・dd/(dAPV・pd)(pAPV:proximalAPV、dAPV:distalAPV、pd:proximal:d、dd:distal d)で求めた。これらを早期と1年で比較検討した。【結果】APVは早期で近位部・遠位部で31±17・54±26cm/sec(p=0.003)、1年で23±7・25±8cm/sec(P=0.18)で、早期に有意に遠位部の方が速く、遠位部にて早期の方が有意に速かった(p=0.01)。dは早期で近位部・遠位部で2.5±0.2・1.8±0.2mm(p<0.001)、1年で3.0±0.5・2.6±0.5mm(p=0.02)と近位部で有意に太く、遠位部にて1年の方が有意に太かった(p=0.02)。GFは早期で近位部・遠位部で45±20・41±16ml/min(p=0.50)、1年で50±25・41±20ml/min(p=0.06)で早期・1年ともに近位部でやや多い傾向が認められた。SSRは早期で2.5±0.4、1年で1.3±0.3と早期においては有意に高く(p=0.003)、遠位部で早期に高いずり応力を呈していた。【考察】術後早期のグラフト遠位部のずり応力は近位部と比較して2.5倍と非常に高い状態で、遠隔期においてこの差を改善するようにモデリングが起こり遠位部グラフト径がより太くなっていた。
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