1997 Fiscal Year Annual Research Report
リポソーム包埋ヘモグロビンによる液体換気の有効性に関する実験的研究
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09771006
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田島 敦志 慶應義塾大学, 医学部・外科, 助手 (50276276)
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Keywords | 人工酸素運搬体 / リポソーム包埋ヘモグロビン / 液体換気 / RDS(Respiratory Distress Syndrome) / 肺表面活性物質(surfactant) |
Research Abstract |
われわれは、実験的に肺表面活性物質(surfactant)を除去して作成した傷害肺に対し、人工酸素運搬体であるリポソーム包埋ヘモグロビンを用いて部分液体換気を施行し、血液の酸素化、循環動態の変化を観察した。リポソーム包埋ヘモグロビン(liposome-encapsulated hemoglobin,LEH)は、期限切れの人赤血球から抽出したヘモグロビンを燐脂質膜であるリポソームで包埋した人工酸素運搬体であり、Hb濃度は6.0g/dL、平均粒子径は0.20μm、粘度は2.0cPと血液の1/3、P50は45〜50torrで酸素運搬能力は血液とほぼ同等である。方法は、体重約2.5kgの日本家兎を用い、静脈麻酔を施し、気管切開後、人工呼吸器に接続し、FiO2=1.0で換気を行った。肺傷害は生理食塩水で肺を4〜6回洗浄し、surfactantを洗い出すことにより作成した。その後、10mL/kgのLEH(あるいは生食)を気道内に注入し、PEEPをかけて部分液体換気を行った。液体換気はLEHを用いる群(n=6)と、対照群として生理的食塩水を用いる群(n=6)とに分け検討した。両群とも90分間、心拍数、大動脈圧、動脈血酸素飽和度を経時的に測定した。その結果、肺傷害作成後のPaO2は36.9±5.4torr、PaCO2は48.8±18.5torrであった。この後、生理食塩水で部分液体換気を行った群では、開始15分後のPaO2は33.3±7.1 torr、PaCO2は63.6±34.5torrと改善はみられなかった。しかし、LEHを用いたものでは、PaO2では237.9±206torr、PaCO2は32.1±12.6torrと改善が認められた。循環動態に関しては、気道内へ液体を注入する際に徐脈と血圧の上昇を認めたが、数分以内に安定した。以上、LEHを用いて、実験的に作成した傷害肺に部分液体換気を行いガス交換の改善を認めたことは、この換気方法の有効性を示唆していると考えられる。今後、LEHの回収方法を開発することにより、臨床的に応用できる治療法となる可能性があると思われる。
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